この作家を読み出してから、かれこれ14年くらいにはなろうかとしている。学生時代からの付き合いなのだが、本屋で新刊を見かけると、つい手に取らずにはいられない作家だ。
彼女の作品の中で、一番好きなのは「天体議会」という本である。ハードカバーも文庫も買い、できるだけ綺麗に本を保存することにしている私にしては珍しくこの本に限っては、どちらもかなり手垢にまみれている。
そんな彼女が、またやさしく不思議な話を書いた。それがこの本だ。日常世界とは隔絶された岬を舞台にして、幾人もの個性的なこどもたち、それからこどもの頃の心を忘れずに育ったおとなを通して、不思議で切なくやさしい物語を展開してゆく。見えないものはないのだと言わない。信じがたいものは認めないとは言わない。あるがままに事象を受け入れる柔軟な心が、不思議と真実のやさしさを教えてくれる。
ISBN:4334736998 文庫 長野まゆみ 光文社 2004/06/11 ¥480
彼女の作品の中で、一番好きなのは「天体議会」という本である。ハードカバーも文庫も買い、できるだけ綺麗に本を保存することにしている私にしては珍しくこの本に限っては、どちらもかなり手垢にまみれている。
そんな彼女が、またやさしく不思議な話を書いた。それがこの本だ。日常世界とは隔絶された岬を舞台にして、幾人もの個性的なこどもたち、それからこどもの頃の心を忘れずに育ったおとなを通して、不思議で切なくやさしい物語を展開してゆく。見えないものはないのだと言わない。信じがたいものは認めないとは言わない。あるがままに事象を受け入れる柔軟な心が、不思議と真実のやさしさを教えてくれる。
ISBN:4334736998 文庫 長野まゆみ 光文社 2004/06/11 ¥480
江國香織さんのエッセイである。私はこの本で彼女にのめり込んだと言っても間違いじゃないと思う。これ程までに美しい流れのエッセイを、これまで読んだことがなかった。書かれているのは彼女の夫婦生活の日常である。それでいて不思議に現実味がない。どこか遠くの知らない国で営まれている物語の暮らしのようだ。
元々彼女の文体はとても綺麗だ。それに加えて、小道具ひとつひとつの描写が細かく、込められた愛情を感じて優しい。彼女と、彼女の夫との暮らしは順風満帆というわけではないのだろうが、それでもどこかに羨望を感じるのはきっと、彼女がとても自由であるからなのだろう。
彼女はまるで風のようだと思う。彼女の夫たる人物はそれをよく知っていて、決して風を一所にとどめようとはしない。だから風はいつでも好きな方向に吹き、最後には彼の元へ戻って来る。理想的な夫婦だと思った。この本からは、緑の匂いのする雨を含んだ、遠く懐かしい風の匂いがする。
ISBN:4087473198 文庫 江國 香織 集英社 2001/05 ¥440
元々彼女の文体はとても綺麗だ。それに加えて、小道具ひとつひとつの描写が細かく、込められた愛情を感じて優しい。彼女と、彼女の夫との暮らしは順風満帆というわけではないのだろうが、それでもどこかに羨望を感じるのはきっと、彼女がとても自由であるからなのだろう。
彼女はまるで風のようだと思う。彼女の夫たる人物はそれをよく知っていて、決して風を一所にとどめようとはしない。だから風はいつでも好きな方向に吹き、最後には彼の元へ戻って来る。理想的な夫婦だと思った。この本からは、緑の匂いのする雨を含んだ、遠く懐かしい風の匂いがする。
ISBN:4087473198 文庫 江國 香織 集英社 2001/05 ¥440
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盗まれた蜜月〈後編〉―有閑探偵コラリーとフェリックスの冒険
2004年9月26日 読書
コラフェリシリーズの本編最終話。散々焦らされた挙句、ようやくゴールインできるふたりに乾杯。花嫁誘拐だなんて、昔の映画を思い出すような。この前後編はとにかくフェリックス受難編。花嫁奪われたんだから当然だけど、擦れ違いの連続にはさすがに可哀想になった。自分が捨てられたと勘違いして茫然とする様は、普段の冷静沈着さなど欠片もなく、彼がコラリーを本当に好きなのだとしみじみ教えてくれた。それにしても思い出作りを怠っただなんて、可笑し過ぎる。普通の恋人同士よりもっともっと濃密な思い出をいくつも作ってきたのに、知らないということは可哀想だ。
結局探偵ボナバンも怪盗シュシナックもこのふたりに魅せられてしまったんだろう。迷惑顔ながらどうしても見捨てられないボナバンは、コラリー以上のお人好しだ。シュシナック…もといアル・ジュナイドも、フェリックスを嫌いになれないからここまで引っ張ってしまったんだろう。殴り合いのシーンは何だかやけに爽やかで、間にコラリーがいようがいまいが、ふたりの中で何らかの決着はあれでついたのだと思う。
これで最後なのかと淋しく思っていたら、どうやらこの秋から新展開するらしく安堵している。大好きなシリーズはひとつでも多く残っているに限る。10/1には私のお気に入りの本の最新刊がたくさん出るのでとても楽しみだ。
まずはフェリックスに結婚おめでとうと言おう(コラリーはともかく)。
ISBN:4086002647 文庫 橘香 いくの 集英社 2003/04 ¥520
結局探偵ボナバンも怪盗シュシナックもこのふたりに魅せられてしまったんだろう。迷惑顔ながらどうしても見捨てられないボナバンは、コラリー以上のお人好しだ。シュシナック…もといアル・ジュナイドも、フェリックスを嫌いになれないからここまで引っ張ってしまったんだろう。殴り合いのシーンは何だかやけに爽やかで、間にコラリーがいようがいまいが、ふたりの中で何らかの決着はあれでついたのだと思う。
これで最後なのかと淋しく思っていたら、どうやらこの秋から新展開するらしく安堵している。大好きなシリーズはひとつでも多く残っているに限る。10/1には私のお気に入りの本の最新刊がたくさん出るのでとても楽しみだ。
まずはフェリックスに結婚おめでとうと言おう(コラリーはともかく)。
ISBN:4086002647 文庫 橘香 いくの 集英社 2003/04 ¥520
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今日は珍しくコミックのレビューを。
大富豪であった祖父が亡くなり、莫大な資産を受け継いだたった12歳のミモザに、祖父が遺言でつけたボディガード…それがカイル。人間を信用していなかった祖父は、孫に「人間を信用するな」と言い残してロボットのカイルをボディガードにつけたわけなのだが、このミモザの純粋培養な気質と、まるでロボットと称された実際は警察の厄介者カイルとのハートフルなコメディーといったところか。
彼女の作品を読むのは久々だった。まだ学生だった頃に、「感嘆符なしでは語れない」という好きな話があって、それから夢の話(タイトルを忘れてしまった。不覚)に至るまでずっと読んでいたのだが、そこから暫く触れていない。本屋に並んでいるのを見て手に取ったのは、その設定の面白さだった。
本物のロボットのように無感情で良心の在り処もわからない青年カイルが、ミモザの純粋な愛情を通して、徐々に本当の人間になっていくのだ。冷たく冴え冴えとした瞳に怯えながらも孤独なミモザはロボットの優しさに頼ろうとする。自分を求めてくれる存在に、カイルは愛情というものを少しずつ理解してゆく。彼の悲しい過去が縛りつけていた感情を、ミモザが解凍していくのだ。
元々この作家さんの絵はとても可愛らしい。その愛らしさがともすればひどく暗くなりがちなストーリーを、柔らかく温かく照らしている。優しい、本当にやさしい物語だ。
「愛しい」「側にいたい」「守りたい」
「欲しいのはささいなものだ」
「オレは アルコールとチョコレートと ホンの少しの彼女の命令があれば生きていける――」
思わずじーんとさせてくれる切ない台詞。これでオチたと言っても過言ではない。
ISBN:4592188063 コミック 森生 まさみ 白泉社 2004/09/04 ¥410
大富豪であった祖父が亡くなり、莫大な資産を受け継いだたった12歳のミモザに、祖父が遺言でつけたボディガード…それがカイル。人間を信用していなかった祖父は、孫に「人間を信用するな」と言い残してロボットのカイルをボディガードにつけたわけなのだが、このミモザの純粋培養な気質と、まるでロボットと称された実際は警察の厄介者カイルとのハートフルなコメディーといったところか。
彼女の作品を読むのは久々だった。まだ学生だった頃に、「感嘆符なしでは語れない」という好きな話があって、それから夢の話(タイトルを忘れてしまった。不覚)に至るまでずっと読んでいたのだが、そこから暫く触れていない。本屋に並んでいるのを見て手に取ったのは、その設定の面白さだった。
本物のロボットのように無感情で良心の在り処もわからない青年カイルが、ミモザの純粋な愛情を通して、徐々に本当の人間になっていくのだ。冷たく冴え冴えとした瞳に怯えながらも孤独なミモザはロボットの優しさに頼ろうとする。自分を求めてくれる存在に、カイルは愛情というものを少しずつ理解してゆく。彼の悲しい過去が縛りつけていた感情を、ミモザが解凍していくのだ。
元々この作家さんの絵はとても可愛らしい。その愛らしさがともすればひどく暗くなりがちなストーリーを、柔らかく温かく照らしている。優しい、本当にやさしい物語だ。
「愛しい」「側にいたい」「守りたい」
「欲しいのはささいなものだ」
「オレは アルコールとチョコレートと ホンの少しの彼女の命令があれば生きていける――」
思わずじーんとさせてくれる切ない台詞。これでオチたと言っても過言ではない。
ISBN:4592188063 コミック 森生 まさみ 白泉社 2004/09/04 ¥410
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エンジェル・エンジェル・エンジェル
2004年9月24日 読書
友人から借りた本。前々から薦められてはいたのだが、読む暇がなくて随分と読むのが遅くなってしまった。私と彼女の本の趣味は大体似通っているので、彼女が薦めてくれる本はほぼ私もハマッている。
読み終わって、梨木さんの作風にかなりの先入観を持っていたことに気付いた。もっとふんわりと柔らかく少女向きの話を書いているのかと思った。多分ペンネームが可愛らしいせいだろう。表紙もパステルで優しい。でも、内容は想像以上にシビアでミステリアスだった。
過去と現在が絶妙のバランスで混在するこの本は、読むひとを迷路に迷い込ませる。それは時の迷路であったり、謎と微かな恐怖の迷路だったりもする。そこから抜け出すのに必要なのはただ時間と、熱帯魚の行く末だ。この熱帯魚の存在が話の筋の上でとても重要な役割を担っている。
この世で最も残酷な優しい御伽噺だ。
読後、彼女の世界に引き込まれたままの私は、ぼんやりとそう思った。
ISBN:4101253358 文庫 梨木 香歩 新潮社 2004/02 ¥380
読み終わって、梨木さんの作風にかなりの先入観を持っていたことに気付いた。もっとふんわりと柔らかく少女向きの話を書いているのかと思った。多分ペンネームが可愛らしいせいだろう。表紙もパステルで優しい。でも、内容は想像以上にシビアでミステリアスだった。
過去と現在が絶妙のバランスで混在するこの本は、読むひとを迷路に迷い込ませる。それは時の迷路であったり、謎と微かな恐怖の迷路だったりもする。そこから抜け出すのに必要なのはただ時間と、熱帯魚の行く末だ。この熱帯魚の存在が話の筋の上でとても重要な役割を担っている。
この世で最も残酷な優しい御伽噺だ。
読後、彼女の世界に引き込まれたままの私は、ぼんやりとそう思った。
ISBN:4101253358 文庫 梨木 香歩 新潮社 2004/02 ¥380
なんだか最近ティーンズ小説のレビューばかりだったので、久々にそうではないものを。
江國さんにハマッてから多分2冊目くらいに読んだ本ではなかったかと思う。1冊目は「神様のボート」だった。なんというかすごい落差で度肝を抜かれた。大体何故きゅうりと帽子とよりによって数字の2なんだ。根拠がなくてそのくせものすごく深い理由がありそうで、いい意味でいろんなことを疑ってかかる本だ。
きゅうり、帽子、数字の2と、それぞれ個性がある。独特の性格がある。それは本当にそれらの無機物に意思があったとしたら、きっとそんな風な性格をしていただろうと納得できてしまうのだ。すご過ぎる。彼女が元々児童文学作家だったことをさておいても、人にわかりやすく彼女の世界を知らしめるのにとてもランクの高い才能を感じる。
ちなみに私は帽子によく似ている(らしい)。そういう評価を下した妹はどう見てもきゅうりだ。私は変人の根無し草か何かだと思われているに違いない。あたらずとも遠からずだ。そんな私と比べて妹は目眩がする程健全に生きている。それでも仲良くやれていることの理由を、この本に教えてもらった気がする。
どんな個性の人間でも、仲良しを見つけ出す事は出来るし、己の個性を殺さずに一緒に生きてゆくことも可能なのだ。出会いと別れの中でそんなことを呟いているように思った。
ISBN:4087477096 文庫 江國 香織 集英社 2004/06/17 ¥540
江國さんにハマッてから多分2冊目くらいに読んだ本ではなかったかと思う。1冊目は「神様のボート」だった。なんというかすごい落差で度肝を抜かれた。大体何故きゅうりと帽子とよりによって数字の2なんだ。根拠がなくてそのくせものすごく深い理由がありそうで、いい意味でいろんなことを疑ってかかる本だ。
きゅうり、帽子、数字の2と、それぞれ個性がある。独特の性格がある。それは本当にそれらの無機物に意思があったとしたら、きっとそんな風な性格をしていただろうと納得できてしまうのだ。すご過ぎる。彼女が元々児童文学作家だったことをさておいても、人にわかりやすく彼女の世界を知らしめるのにとてもランクの高い才能を感じる。
ちなみに私は帽子によく似ている(らしい)。そういう評価を下した妹はどう見てもきゅうりだ。私は変人の根無し草か何かだと思われているに違いない。あたらずとも遠からずだ。そんな私と比べて妹は目眩がする程健全に生きている。それでも仲良くやれていることの理由を、この本に教えてもらった気がする。
どんな個性の人間でも、仲良しを見つけ出す事は出来るし、己の個性を殺さずに一緒に生きてゆくことも可能なのだ。出会いと別れの中でそんなことを呟いているように思った。
ISBN:4087477096 文庫 江國 香織 集英社 2004/06/17 ¥540
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今日は久々に映画のレビューを。先日LOVERSを観に行ってきた。英雄にも出演したチャン・ツィイーが主役である。チャイナ美人な彼女には自国の衣装がよく似合う。英雄もそうだったが、この2作の中国映画で一番惹かれるのは衣装だ。布の使い方がおそろしく美しい。今回の映画でもチャン・ツィイーの舞いで流れる水のような衣装は圧巻だった。
今回は彼女を舞いを観に行くという目的であって、実のところ映画そのものに期待をしていたわけではなかった。英雄のときもそうだったからだ。…しかしまあそれにしてもあまりにお粗末なストーリーで呆れてしまった。一応はミステリー仕立てに近いのだと思うが、序盤でラストまでがすべてわかってしまうのはどうなんだろう。予告程に客を騙してなどいない。それぞれの正体や思惑にも意外性はどこにもなかった。
あと無駄にラブシーンが多い。別に暗転でもよかったんじゃないだろうか。その分で、歴史的に魅力ある背景の方をもっと書き込んでほしかった。折角の飛刀門という設定がちっとも生かされていなくて悲しくなる。愛を主題にするのであっても、ラブシーンはさらりとでいい。何だか異様になまなましくて引いてしまった。
数日経って、心に残るのはやはり小妹の舞い、そして殺陣である。それ以外の魅力は残念ながらあまり感じなかった。二度は行かない。
DVD 西暦859年、唐代の中国で、朝廷は反乱軍最大の『飛刀門』撲滅を画策。官史の金と瀏に、指導者を10日以内に捕らえるように命ずる。飛刀門の娘と思われる小妹は目が不自由で、金は反乱戦士を装い小妹に接近。捕らえられた彼女を救出するふりして、敵のアジトまで導かせようと企むが、旅の途中でふたりの心はひかれあってしまう。 小妹に…
今回は彼女を舞いを観に行くという目的であって、実のところ映画そのものに期待をしていたわけではなかった。英雄のときもそうだったからだ。…しかしまあそれにしてもあまりにお粗末なストーリーで呆れてしまった。一応はミステリー仕立てに近いのだと思うが、序盤でラストまでがすべてわかってしまうのはどうなんだろう。予告程に客を騙してなどいない。それぞれの正体や思惑にも意外性はどこにもなかった。
あと無駄にラブシーンが多い。別に暗転でもよかったんじゃないだろうか。その分で、歴史的に魅力ある背景の方をもっと書き込んでほしかった。折角の飛刀門という設定がちっとも生かされていなくて悲しくなる。愛を主題にするのであっても、ラブシーンはさらりとでいい。何だか異様になまなましくて引いてしまった。
数日経って、心に残るのはやはり小妹の舞い、そして殺陣である。それ以外の魅力は残念ながらあまり感じなかった。二度は行かない。
DVD 西暦859年、唐代の中国で、朝廷は反乱軍最大の『飛刀門』撲滅を画策。官史の金と瀏に、指導者を10日以内に捕らえるように命ずる。飛刀門の娘と思われる小妹は目が不自由で、金は反乱戦士を装い小妹に接近。捕らえられた彼女を救出するふりして、敵のアジトまで導かせようと企むが、旅の途中でふたりの心はひかれあってしまう。 小妹に…
緋色の檻〈後編〉―有閑探偵コラリーとフェリックスの冒険
2004年9月21日 読書
初の前後編。それだけに話がかなり重めだった。主題はフェリックスの心の傷である。子供にとっての母親の存在の大きさをしみじみと知る1冊でもあった。性格に難ありを除けば、容姿端麗、頭脳明晰、冷静沈着なフェリックスがどうしても幸せになれない根本的原因が、彼の母親にある。幼馴染でもあるコラリーだけが、彼の深淵の痛みまでその声を届かせることが出来るのだ。今回もやはり奈落の底から彼を救ったのは彼女だった。躊躇いなく己に向かい、引鉄を引いた彼女は格好よかったと思う。彼女の枯れることない本物の愛情をそこに垣間見た気がした。
今回は全面的にシュシナックが協力に回っている。なんだかんだ言いつつあの怪盗ほど紳士な男もいないだろう。むしろ見ていて可哀想になってくるくらいだ。途中、我慢が限界を超える場面もあったが、それでも最後には引いてしまう彼は実際、かなり甘い。結局あのふたりともを気に入っているのだろう。シュシナックが一番人間くさい話でもあったように思う。フェリックスの出番が少ない分、彼の優しさが光っていた。
何はともあれ、ようやく幸せになれそうなフェリックスに安堵する。しかし次回作のタイトルが気になるところだ…「盗まれた蜜月」って。いい加減幸せにしてやって…。
ISBN:4086001195 文庫 橘香 いくの 集英社 2002/06 ¥500
今回は全面的にシュシナックが協力に回っている。なんだかんだ言いつつあの怪盗ほど紳士な男もいないだろう。むしろ見ていて可哀想になってくるくらいだ。途中、我慢が限界を超える場面もあったが、それでも最後には引いてしまう彼は実際、かなり甘い。結局あのふたりともを気に入っているのだろう。シュシナックが一番人間くさい話でもあったように思う。フェリックスの出番が少ない分、彼の優しさが光っていた。
何はともあれ、ようやく幸せになれそうなフェリックスに安堵する。しかし次回作のタイトルが気になるところだ…「盗まれた蜜月」って。いい加減幸せにしてやって…。
ISBN:4086001195 文庫 橘香 いくの 集英社 2002/06 ¥500
楡屋敷の怪人―有閑探偵コラリーとフェリックスの冒険
2004年9月20日 読書
何はともあれ表紙のフェリックスが真剣な表情で好きなんだが(レビューになってない)。
何となくクリスティーを思わせるようなミステリー。勿論ずっとライトだが雰囲気がどことなく。このシリーズにしては凄惨なラストだったかなと思う。いつもは陽気で人を食ったようなところのある怪盗シュシナックがかなりシリアスで驚いた。彼の過去が出てきたが余計に謎が増えただけだった…。それもまたよし。
それからフェリックスの心の闇が覗ける1冊だ。なんというか子供にとっての母親の存在の大きさをしみじみと思う。最近、子供に対する悲惨な事件が増えているが、犯罪と明らかにされるまでにはいかなくても、一体どれほどの子供が自身の親によって傷付けられているのかと思うと胸が痛い。でも多分、フェリックスはこの先コラリーによって光を見ることが出来るのだろう。一生分の不幸を既に体験済みの彼にはこれから明るく優しい未来が待っているのだと信じてやまない。
どちらかといえば暗いストーリーに分類される今回の話だが、主要キャラの過去の傷を知ることの出来る貴重な1冊だと思う。このシリーズは底抜けに明るいように見えて、ふとそんな影を垣間見ることが出来る。だからこそ長く続いていても重荷にならないのだろう。
ISBN:4086147947 文庫 橘香 いくの 集英社 2000/12 ¥520
何となくクリスティーを思わせるようなミステリー。勿論ずっとライトだが雰囲気がどことなく。このシリーズにしては凄惨なラストだったかなと思う。いつもは陽気で人を食ったようなところのある怪盗シュシナックがかなりシリアスで驚いた。彼の過去が出てきたが余計に謎が増えただけだった…。それもまたよし。
それからフェリックスの心の闇が覗ける1冊だ。なんというか子供にとっての母親の存在の大きさをしみじみと思う。最近、子供に対する悲惨な事件が増えているが、犯罪と明らかにされるまでにはいかなくても、一体どれほどの子供が自身の親によって傷付けられているのかと思うと胸が痛い。でも多分、フェリックスはこの先コラリーによって光を見ることが出来るのだろう。一生分の不幸を既に体験済みの彼にはこれから明るく優しい未来が待っているのだと信じてやまない。
どちらかといえば暗いストーリーに分類される今回の話だが、主要キャラの過去の傷を知ることの出来る貴重な1冊だと思う。このシリーズは底抜けに明るいように見えて、ふとそんな影を垣間見ることが出来る。だからこそ長く続いていても重荷にならないのだろう。
ISBN:4086147947 文庫 橘香 いくの 集英社 2000/12 ¥520
カブラルの呪われた秘宝
2004年9月19日 読書
これは前回書いた「奈落の女神」より前の話である。ミステリーとしてはこちらの方が面白いかもしれない。元々ライトミステリーといった感じで、推理するよりはコラリーとフェリックス、それにシュシナック他ふたりを取り巻くキャラたちの言動を追う方が楽しいシリーズではある。
孤島で進んでゆく話は、逃げ場のない切迫したどきどき感があるのが常だと思うのだが、彼等の言動があまりに可笑しくて緊張感がない。ミステリーとしての評価は低いかもしれないが、元々ミステリー好きとは言い難い私にはこれくらいの方が読みやすいかも。
シュシナックがコラリーに対してかなり本気になった回でもある。しかしどう考えてもあの恋敵にはさすがの怪盗も敵わない気がするんだけど…。最後の思惑、コラリーに残した手紙さえ、抜け目なく先に処分するフェリックスは本当に千里眼の気がしてならない。但しコラリーが絡んだときだけ。人間として明らかに何かが欠如しているフェリックスだが、コラリー絡みの部分だけ抜き出して読めばなかなか可愛い青年ではないかと思う。そう思うこと自体、既に人間外の仲間入り宣言なのだろうか…。試合に勝って勝負に負けたといわんばかりのシュシナックが少し可哀想でもある。
ISBN:4086145111 文庫 橘香 いくの 集英社 1998/10 ¥560
孤島で進んでゆく話は、逃げ場のない切迫したどきどき感があるのが常だと思うのだが、彼等の言動があまりに可笑しくて緊張感がない。ミステリーとしての評価は低いかもしれないが、元々ミステリー好きとは言い難い私にはこれくらいの方が読みやすいかも。
シュシナックがコラリーに対してかなり本気になった回でもある。しかしどう考えてもあの恋敵にはさすがの怪盗も敵わない気がするんだけど…。最後の思惑、コラリーに残した手紙さえ、抜け目なく先に処分するフェリックスは本当に千里眼の気がしてならない。但しコラリーが絡んだときだけ。人間として明らかに何かが欠如しているフェリックスだが、コラリー絡みの部分だけ抜き出して読めばなかなか可愛い青年ではないかと思う。そう思うこと自体、既に人間外の仲間入り宣言なのだろうか…。試合に勝って勝負に負けたといわんばかりのシュシナックが少し可哀想でもある。
ISBN:4086145111 文庫 橘香 いくの 集英社 1998/10 ¥560
相も変わらずコラリーのことに関してだけ理性をなくすフェリックスがいる。この話では、怪盗シュシナックのバックグラウンドや本名などがわかるので、彼のファンのひとにはお勧めだと思う。彼の素顔は結構な人数が知っている模様…あまり隠す気がなさそうだ。変装の名人だけに顔を知られたところでと思っているのかも。
ミステリー度としては幾分低めなこの本。トリックなどで楽しむよりはコラリーとフェリックス、そしてシュシナックのそれぞれのキャラを楽しんだ方がいい。それにしてもフェリックス氏は誰であろうとコラリーに近付く者は容赦しないのですな…ステキ過ぎる。
彼が軍人として戦争に赴いたときのエピソードもあるのだが、あまりに彼らしくて笑ってしまう。常識というものがとことん通じない存在だが、彼が出てこないと淋しくて仕方がなくなるのは、すごい存在感だと思う。少しずつフェリックスへの恋心を確認してゆくコラリーの心の動きもポイントだ。
薔薇が帰ってくるとは思わなかった。フェリックス、彼の言動は一体どこまでが計算でどこからが天然なのか…。謎めいた男である。最後に珍しくシュシナックに喝采の仕返しをしたあたり、フェリックスの抱える鬱屈としたものがわかって仄かに可笑しい。
ISBN:4086146452 文庫 橘香 いくの 集英社 1999/10 ¥540
ミステリー度としては幾分低めなこの本。トリックなどで楽しむよりはコラリーとフェリックス、そしてシュシナックのそれぞれのキャラを楽しんだ方がいい。それにしてもフェリックス氏は誰であろうとコラリーに近付く者は容赦しないのですな…ステキ過ぎる。
彼が軍人として戦争に赴いたときのエピソードもあるのだが、あまりに彼らしくて笑ってしまう。常識というものがとことん通じない存在だが、彼が出てこないと淋しくて仕方がなくなるのは、すごい存在感だと思う。少しずつフェリックスへの恋心を確認してゆくコラリーの心の動きもポイントだ。
薔薇が帰ってくるとは思わなかった。フェリックス、彼の言動は一体どこまでが計算でどこからが天然なのか…。謎めいた男である。最後に珍しくシュシナックに喝采の仕返しをしたあたり、フェリックスの抱える鬱屈としたものがわかって仄かに可笑しい。
ISBN:4086146452 文庫 橘香 いくの 集英社 1999/10 ¥540
入手できた順番に読んでいるので、シリーズ物だというのに滅茶苦茶な順序で読んでいる。これはシリーズ3作目の作品なので、主人公カップルはまだそれ程ラブラブではない(尤も彼らは結婚間近になってもさして変わりはしないのだが)。
コラリーとフェリックスの主人公以外に、とても人気のあるキャラクターがいる。それがシュシナックだ。怪盗であり、その手口の鮮やかさに民衆から喝采を浴びている人間である。変装の名人で素顔を知る者は少ない。というか確か主人公のふたりだけだったと思う。中でもフェリックスは、シュシナックがどれ程見事に変装しようが一発でわかってしまう。彼は怪盗の匂いでも覚えているんだろうか(ありえそうで怖い)。もとい、彼が覚えているのは怪盗の匂いではなく、憎むべき恋敵の匂いだろう。殺気に近いような気もする。
まあそんなフェリックスの恋敵、シュシナックも多く出演する一作なのだが、コラリーが自ら事件に巻き込まれていくのは相変わらずである。今回の舞台は、コラリーがフェリックスの婚約させられるまで通っていた修道院の寄宿学校のある地だった。そこの領主である伯爵家に、もう断絶した筈の王家のご落胤が現れたというのが最初のきっかけなのだが、それの調査に向かった(もとい現国王に強制的に向かわされた)フェリックスと、伯爵の持つ何かを狙って現れた怪盗、更に寄宿学校に残した荷物を取りにきていたコラリー他、どんどんとメンバーが事件に関わってゆく。その展開のテンポが軽快で読みやすいのがこのシリーズの特徴のひとつだろうと思う。
見所はいろいろあるが、フェリックス贔屓の私としてはコラリーを傷付けられてプチンとキレた彼がポイント高い。冷静沈着というか感情をどこかに置き忘れてきたかのように見えるフェリックスだが、コラリーが絡むと無表情の下で激しい炎を燃やす。それは怒りだったり嫉妬だったりするわけだが、肝心のコラリーはそれをあまりよくわかっていない。シュシナックや、腐れ縁?の探偵ボナバンはすぐに気付いているのに。そのあたりの擦れ違いがまた面白い。
どうも暫くはこのシリーズのレビューになりそうな…。
ISBN:4086145537 文庫 橘香 いくの 集英社 1999/02 ¥540
コラリーとフェリックスの主人公以外に、とても人気のあるキャラクターがいる。それがシュシナックだ。怪盗であり、その手口の鮮やかさに民衆から喝采を浴びている人間である。変装の名人で素顔を知る者は少ない。というか確か主人公のふたりだけだったと思う。中でもフェリックスは、シュシナックがどれ程見事に変装しようが一発でわかってしまう。彼は怪盗の匂いでも覚えているんだろうか(ありえそうで怖い)。もとい、彼が覚えているのは怪盗の匂いではなく、憎むべき恋敵の匂いだろう。殺気に近いような気もする。
まあそんなフェリックスの恋敵、シュシナックも多く出演する一作なのだが、コラリーが自ら事件に巻き込まれていくのは相変わらずである。今回の舞台は、コラリーがフェリックスの婚約させられるまで通っていた修道院の寄宿学校のある地だった。そこの領主である伯爵家に、もう断絶した筈の王家のご落胤が現れたというのが最初のきっかけなのだが、それの調査に向かった(もとい現国王に強制的に向かわされた)フェリックスと、伯爵の持つ何かを狙って現れた怪盗、更に寄宿学校に残した荷物を取りにきていたコラリー他、どんどんとメンバーが事件に関わってゆく。その展開のテンポが軽快で読みやすいのがこのシリーズの特徴のひとつだろうと思う。
見所はいろいろあるが、フェリックス贔屓の私としてはコラリーを傷付けられてプチンとキレた彼がポイント高い。冷静沈着というか感情をどこかに置き忘れてきたかのように見えるフェリックスだが、コラリーが絡むと無表情の下で激しい炎を燃やす。それは怒りだったり嫉妬だったりするわけだが、肝心のコラリーはそれをあまりよくわかっていない。シュシナックや、腐れ縁?の探偵ボナバンはすぐに気付いているのに。そのあたりの擦れ違いがまた面白い。
どうも暫くはこのシリーズのレビューになりそうな…。
ISBN:4086145537 文庫 橘香 いくの 集英社 1999/02 ¥540
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最近、このシリーズも読み始めてみた。とは言え、随分前に開始されたシリーズのため、本屋になかなかない。古本屋に行ってようやく数冊入手できたような感じで、間を飛ばして新刊を読んだりと順番が滅茶苦茶だ。一応、1冊でひとつの事件が解決するようになっているのだが、コラリーとフェリックスの距離が段々と近付いてゆくのも醍醐味のひとつなのだろうと思う。それを飛ばし飛ばしで読んでもあまり気にならないのは、このふたり、たとえ結婚しても変わりそうにないからか。
主人公の片割れコラリーは仕立て屋の娘だが、母が男爵の娘で仕立て屋に駆け落ちしてきたらしい。その母はとうに亡くなっているのだが、この程、母の父親…つまりコラリーの祖父と対面が叶い、無事和解。その際に申し分のない婚約者を連れてこいという条件があったことから、共について行ったのが幼馴染のフェリックスだったのだ。それからコラリーとフェリックスのふたりは、祖父の男爵の屋敷で暮らしている。
フェリックスは近衛兵だ。つまり陛下直属の兵士というわけだが、おそろしく美形で頭もものすごくいい。なのに性格がなんというかもう破綻している。思ったことはすべて口に出すと言ってもよく、それが国王陛下相手であっても変わりはない。そのくせ陛下には玩具として可愛がられて(苛められて)いるようで、問題をいくつ起こしても何度となくその尻拭いをしてもらえている。但しその条件にとんでもない事件の解決をさせられてばかりいる、自業自得の可哀想なひと。
フェリックスはコラリーを一途に想い続けているが、何分あの性格のため彼女を怒らせてばかりいる。コラリーもまたかなり破天荒かつお転婆猪突猛進早とちり大得意少女のため、ふたりの周囲にはトラブルが耐えない。…とてもいいコンビだと思う…。
まあそんなふうに、ふたりでいくつもの事件を解決し(フェリックスが事件の謎を解き、コラリーは引っかき回しているだけとも言うが)、恋敵の美形な怪盗や顔だけはいいが性格破綻(こういうキャラが多い…)の国王や、それぞれの事件のゲストを交えてテンポよく話は進んでゆく。
そんなシリーズの中の一作にあたるこの本は、今まで読んだ中でもかなり面白いと思う本だった。この本でようやくふたりが両思いになるせいでもあるだろうし、怪盗がうまく絡んでくる話であり、興味深い事件に巻き込まれているせいでもあると思う。まるで人間らしくないフェリックスの本音が覗ける、貴重な本かもしれない。
ここでようやく正真正銘の恋人同士になれたふたりだが、飛び飛びに読んで知った今後の展開によると、まだまだ結婚への道は険しいらしい。いつも冷静なフェリックスが焼き餅をやくシーンが読んでいて一番すきである。変な美形には相変わらず弱い私だった。
別に意図しているわけでもないのだが、最近のレビューはジュニア文庫ばかりだ。頭が疲れているのかなー。乱読派なので実際、純文学からボーイズラブまで何でも読む。…ボーイズラブはなんというか本の出過ぎでかなり食傷気味なのだが、ジュニア系でもミステリーやファンタジーメインの話にはかなり面白いものも多い。
読書の秋の間に、これからどれ程の新しい発見、新しい本との出会いがあるかと思うと、すごくわくわくしてくる。
ISBN:4086146002 文庫 橘香 いくの 集英社 1999/06 ¥560
主人公の片割れコラリーは仕立て屋の娘だが、母が男爵の娘で仕立て屋に駆け落ちしてきたらしい。その母はとうに亡くなっているのだが、この程、母の父親…つまりコラリーの祖父と対面が叶い、無事和解。その際に申し分のない婚約者を連れてこいという条件があったことから、共について行ったのが幼馴染のフェリックスだったのだ。それからコラリーとフェリックスのふたりは、祖父の男爵の屋敷で暮らしている。
フェリックスは近衛兵だ。つまり陛下直属の兵士というわけだが、おそろしく美形で頭もものすごくいい。なのに性格がなんというかもう破綻している。思ったことはすべて口に出すと言ってもよく、それが国王陛下相手であっても変わりはない。そのくせ陛下には玩具として可愛がられて(苛められて)いるようで、問題をいくつ起こしても何度となくその尻拭いをしてもらえている。但しその条件にとんでもない事件の解決をさせられてばかりいる、自業自得の可哀想なひと。
フェリックスはコラリーを一途に想い続けているが、何分あの性格のため彼女を怒らせてばかりいる。コラリーもまたかなり破天荒かつお転婆猪突猛進早とちり大得意少女のため、ふたりの周囲にはトラブルが耐えない。…とてもいいコンビだと思う…。
まあそんなふうに、ふたりでいくつもの事件を解決し(フェリックスが事件の謎を解き、コラリーは引っかき回しているだけとも言うが)、恋敵の美形な怪盗や顔だけはいいが性格破綻(こういうキャラが多い…)の国王や、それぞれの事件のゲストを交えてテンポよく話は進んでゆく。
そんなシリーズの中の一作にあたるこの本は、今まで読んだ中でもかなり面白いと思う本だった。この本でようやくふたりが両思いになるせいでもあるだろうし、怪盗がうまく絡んでくる話であり、興味深い事件に巻き込まれているせいでもあると思う。まるで人間らしくないフェリックスの本音が覗ける、貴重な本かもしれない。
ここでようやく正真正銘の恋人同士になれたふたりだが、飛び飛びに読んで知った今後の展開によると、まだまだ結婚への道は険しいらしい。いつも冷静なフェリックスが焼き餅をやくシーンが読んでいて一番すきである。変な美形には相変わらず弱い私だった。
別に意図しているわけでもないのだが、最近のレビューはジュニア文庫ばかりだ。頭が疲れているのかなー。乱読派なので実際、純文学からボーイズラブまで何でも読む。…ボーイズラブはなんというか本の出過ぎでかなり食傷気味なのだが、ジュニア系でもミステリーやファンタジーメインの話にはかなり面白いものも多い。
読書の秋の間に、これからどれ程の新しい発見、新しい本との出会いがあるかと思うと、すごくわくわくしてくる。
ISBN:4086146002 文庫 橘香 いくの 集英社 1999/06 ¥560
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伯爵と妖精 あまい罠には気をつけて
2004年9月15日 読書
今日は早速シリーズの2巻目を読んでみた。面白い。楽しい。エドガーはものすごく重い過去があって、ともすればおそろしく暗い話になりかねないのだけど、彼のどこまで天然なのかわからないタラシっぷりと軽快な話術で楽しい話に仕上がっている。今回はぐっと妖精博士リディアとの距離も近付いたような…。ささいなことで幸せをかみしめている彼が可愛いらしくも切ない。エドガーの従僕で、一歩間違うと大量殺人鬼にもなりえるレイヴンは少しずつ人間らしいところを得てきたと思う。やっぱりエドガーとレイヴンには幸せになってほしいわけで。リディアがいつまでもそばにいてくれますようにと祈らずにはいられない。
今回の妖精のメインは霧男だろうと思うが、それよりも「妖精の卵」に惹かれる。本当にああいう瑪瑙があるのだろうか。本物があるなら是非見てみたい。記述を読む限りではとても美しく神秘的な瑪瑙のようだ。スコットランドの悪戯好きな妖精にふさわしい明るい庭で、それが眺められたら本当に幸せだと思う。
続きが気になって仕方がないが(一応1冊完結形式になっている)、この本、出たばかりなので暫くは悶えそう。でもそんな本と巡り会えてとても嬉しいと思う。
ISBN:4086004747 文庫 谷 瑞恵 集英社 2004/08/31 ¥540
今回の妖精のメインは霧男だろうと思うが、それよりも「妖精の卵」に惹かれる。本当にああいう瑪瑙があるのだろうか。本物があるなら是非見てみたい。記述を読む限りではとても美しく神秘的な瑪瑙のようだ。スコットランドの悪戯好きな妖精にふさわしい明るい庭で、それが眺められたら本当に幸せだと思う。
続きが気になって仕方がないが(一応1冊完結形式になっている)、この本、出たばかりなので暫くは悶えそう。でもそんな本と巡り会えてとても嬉しいと思う。
ISBN:4086004747 文庫 谷 瑞恵 集英社 2004/08/31 ¥540
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伯爵と妖精―あいつは優雅な大悪党
2004年9月14日 読書
今日、読んでいたのはこれ。イラストレーターさんが大好きで、前から手に取ろうかどうしようかと思っていたのだが、今月2巻目が出たのを機に買ってみる。
主人公のひとりである伯爵エドガーはおそろしく魅力的なキャラだった。まあ私の個人的に、な見解においてだが(つまりただの私の好みとも言う)。大体がして過去のあるキャラが好きだ。悩みまくっているくせにその苦悩を表に出さない強がりというか意地っ張りというかアホかこいつは、というキャラが好きだ(褒めている)。おそろしく美形で弁が立ち女ったらしの彼は、その外見から言ってもあるキャラを彷彿とさせてくれる。それがまたいいのかもしれない。
フェアリードクター(妖精博士)という職業は、過去本当にあったのだろうか。それとも作者の創作か。いずれにせよイングランドという舞台にふさわしいモチーフだと思われる。英国のあまたの詩人や文豪がモチーフに使った「妖精」。かく言う私もかなり興味が惹かれている題材だ。実在の有無はさておき、こんな職業があればステキだなと思うわけなのだった。私も猫や悪戯好きのブラウニーたちと話をしてみたいものである。美味しい紅茶をご馳走してあげられるのに。
伯爵の過去はまた随分と複雑でたくさんの伏線が絡み合っている。妖精博士の純粋な少女の光に当てられて、陰ばかりを歩いてきた彼の幸せが少しだけ見えてきたような感じだ。最終的に伯爵の過去の敵と戦うまで続くのだろうが、まずは2巻目を読むのを楽しみにしている。主人公の少女は愛らしく、相棒の猫(妖精)もかわいい。エドガーでなくても手放したくなくなるかもしれない。
次はどんな妖精に会えるのか楽しみだ。
ISBN:4086003937 文庫 谷 瑞恵 集英社 2004/03 ¥540
主人公のひとりである伯爵エドガーはおそろしく魅力的なキャラだった。まあ私の個人的に、な見解においてだが(つまりただの私の好みとも言う)。大体がして過去のあるキャラが好きだ。悩みまくっているくせにその苦悩を表に出さない強がりというか意地っ張りというかアホかこいつは、というキャラが好きだ(褒めている)。おそろしく美形で弁が立ち女ったらしの彼は、その外見から言ってもあるキャラを彷彿とさせてくれる。それがまたいいのかもしれない。
フェアリードクター(妖精博士)という職業は、過去本当にあったのだろうか。それとも作者の創作か。いずれにせよイングランドという舞台にふさわしいモチーフだと思われる。英国のあまたの詩人や文豪がモチーフに使った「妖精」。かく言う私もかなり興味が惹かれている題材だ。実在の有無はさておき、こんな職業があればステキだなと思うわけなのだった。私も猫や悪戯好きのブラウニーたちと話をしてみたいものである。美味しい紅茶をご馳走してあげられるのに。
伯爵の過去はまた随分と複雑でたくさんの伏線が絡み合っている。妖精博士の純粋な少女の光に当てられて、陰ばかりを歩いてきた彼の幸せが少しだけ見えてきたような感じだ。最終的に伯爵の過去の敵と戦うまで続くのだろうが、まずは2巻目を読むのを楽しみにしている。主人公の少女は愛らしく、相棒の猫(妖精)もかわいい。エドガーでなくても手放したくなくなるかもしれない。
次はどんな妖精に会えるのか楽しみだ。
ISBN:4086003937 文庫 谷 瑞恵 集英社 2004/03 ¥540
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彩雲国物語―はじまりの風は紅く
2004年9月13日 読書
昨日、手に入らなかったシリーズの最新刊。その一番最初の本であるのがこれ。系統としてはチャイナ・ファンタジーになるのだろうけど、作者はノリでこういう雰囲気を選択したらしい。変にチャイナにのめりこんでいないところが反ってこの本の魅力になっている気がする。
国で初の女性官吏となり、のちに希代の官吏と呼ばれる紅秀麗が主人公なのだが、彼女自身とても魅力のあるキャラだけど、彼女の周囲におそろしくステキ過ぎるキャラクターがわさわさといる。個人的には彼女の叔父ふたりがかなり好きだ。秀麗の父の正反対の弟たち。なのにふたりとも出来そこない(外見上は)の兄を深く慕っている。ふたりとも敵に回せばこれ程おそろしい人物もいないと思うのだが、兄の前では可愛い弟になってしまうところが何よりも一番おそろしいかもしれない。そんなわけで私は3巻目が一番好きである。
こういったジュニア向けのストーリの常として、主人公秀麗を愛するキャラというのが勿論存在する。時の帝だ。文武両道で美しい顔立ちを持つ彼はしかし、その性格の変人ぶりはすさまじい。そして彼もまたブラコンである。基本的にこの話に出てくるキャラは自分の家族(もしくは親友)を深く愛している者が多い。普段の彼らの持つ冷酷とも呼べる一面が、その愛情深さによって時にこの上なく美しいものに転じるのだからすごい。
現在は3巻まで出ており、女性で初めて官吏になるための国試を通った秀麗は、地方の…いわゆる日本で言う「知事」に任官された。これから自分を無償に愛してくれる帝の元を離れて、新しい土地で初めての任務に向かう彼女。またどんな素晴らしい展開を見せてくれるのか、とても楽しみだ。可哀想なのは帝である。彼の恋心は、精神的に幼い彼女に一体いつ通じるものやら…。
ISBN:4044499012 文庫 雪乃 紗衣 角川書店 2003/10 ¥460
国で初の女性官吏となり、のちに希代の官吏と呼ばれる紅秀麗が主人公なのだが、彼女自身とても魅力のあるキャラだけど、彼女の周囲におそろしくステキ過ぎるキャラクターがわさわさといる。個人的には彼女の叔父ふたりがかなり好きだ。秀麗の父の正反対の弟たち。なのにふたりとも出来そこない(外見上は)の兄を深く慕っている。ふたりとも敵に回せばこれ程おそろしい人物もいないと思うのだが、兄の前では可愛い弟になってしまうところが何よりも一番おそろしいかもしれない。そんなわけで私は3巻目が一番好きである。
こういったジュニア向けのストーリの常として、主人公秀麗を愛するキャラというのが勿論存在する。時の帝だ。文武両道で美しい顔立ちを持つ彼はしかし、その性格の変人ぶりはすさまじい。そして彼もまたブラコンである。基本的にこの話に出てくるキャラは自分の家族(もしくは親友)を深く愛している者が多い。普段の彼らの持つ冷酷とも呼べる一面が、その愛情深さによって時にこの上なく美しいものに転じるのだからすごい。
現在は3巻まで出ており、女性で初めて官吏になるための国試を通った秀麗は、地方の…いわゆる日本で言う「知事」に任官された。これから自分を無償に愛してくれる帝の元を離れて、新しい土地で初めての任務に向かう彼女。またどんな素晴らしい展開を見せてくれるのか、とても楽しみだ。可哀想なのは帝である。彼の恋心は、精神的に幼い彼女に一体いつ通じるものやら…。
ISBN:4044499012 文庫 雪乃 紗衣 角川書店 2003/10 ¥460
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何だか無性にファンタジーが読みたくなって、昨日買ってきた本が当たりで幸せな午後。その続きを買いに行くべく家の近所の本屋に向かう。北海道はもう既に肌寒い。半袖のシャツにジーンズで自転車を漕げば、吹く風はすっかり秋の匂いだった。見上げれば空が高いのに驚く。秋だ。秋だよ。
お目当てのシリーズの最新刊は、先月発行になったばかりなので絶対にあると思ったのに品切れ。かなりの大きい本屋なのだ。なのにない。どこにもない。あの瞬間の脱力感と失望は味わったひとにはわかる筈。ああ、こんなことなら昨日重いからなどというどうでもいい理由で買うのをやめずに、あのまま3冊とも買えばよかったのだ。後悔先に立たずという言葉がざっくりと突き刺さる。
気を取り直して、その隣にあるこちらも大きい古本屋に飛び込む。探している本はやはりなかったのだが、代わりに面白そうな本を何冊かみつけて購入。1冊105円は美味しい。シリーズ物の1巻だけを3種類買ってみる。帰宅して早速読んでみたが、そのうち1冊は続きを買ってみようと思う類いの本だった。ただ昔の本なので、古本屋を巡った方が見つかるかも。今度の休日は古本屋巡りか。それもまたいい。秋っぽい。
お目当てのシリーズの最新刊は、先月発行になったばかりなので絶対にあると思ったのに品切れ。かなりの大きい本屋なのだ。なのにない。どこにもない。あの瞬間の脱力感と失望は味わったひとにはわかる筈。ああ、こんなことなら昨日重いからなどというどうでもいい理由で買うのをやめずに、あのまま3冊とも買えばよかったのだ。後悔先に立たずという言葉がざっくりと突き刺さる。
気を取り直して、その隣にあるこちらも大きい古本屋に飛び込む。探している本はやはりなかったのだが、代わりに面白そうな本を何冊かみつけて購入。1冊105円は美味しい。シリーズ物の1巻だけを3種類買ってみる。帰宅して早速読んでみたが、そのうち1冊は続きを買ってみようと思う類いの本だった。ただ昔の本なので、古本屋を巡った方が見つかるかも。今度の休日は古本屋巡りか。それもまたいい。秋っぽい。
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休日に本屋に行くと時間を忘れてしまう。忘れすぎてとんでもない時間になっていて驚いたくらいだ。
大きくて広い本屋に行った。最近の行きつけなのだが、既刊の品揃えがよく静かでいい。難を言えば文庫の保存状態があまりよくないことか…既刊が揃っているにもかかわらず、新刊しか買う気になれない。もっぱら既刊をチェックして、よそで買うようになってしまった。勿体ないことだと思う。ちなみにコミックの配置が滅茶苦茶なのが気になる…昔の職業病で直してしまいたくなるが、我慢我慢…。
9月1日から店頭の一番目立つところはあのピンク色の大きなサイズのハードカバーに占められている。どっさりと積まれた山は壮観だ。私は映画は見るのだが原作は読まない。理由は翻訳が私に合わないせいだ。上手い下手などという問題ではなく、単純に好みではないのだと思う。世界中でたくさん読まれていて押しも押されぬベストセラーなのに読めないのは勿体無い。…ここは時間がかかっても原書で読むべきか…。
そして今日もまた本を買い込んでしまった。近頃は江國氏と梨木氏などを読む傍ら、ファンタジー小説に再燃している。現在3巻まで出ているチャイナファンタジーを買ってみた。好みに合うといい。合ってしまうとまた散財だけれど幸せだからいいのだ。
大きくて広い本屋に行った。最近の行きつけなのだが、既刊の品揃えがよく静かでいい。難を言えば文庫の保存状態があまりよくないことか…既刊が揃っているにもかかわらず、新刊しか買う気になれない。もっぱら既刊をチェックして、よそで買うようになってしまった。勿体ないことだと思う。ちなみにコミックの配置が滅茶苦茶なのが気になる…昔の職業病で直してしまいたくなるが、我慢我慢…。
9月1日から店頭の一番目立つところはあのピンク色の大きなサイズのハードカバーに占められている。どっさりと積まれた山は壮観だ。私は映画は見るのだが原作は読まない。理由は翻訳が私に合わないせいだ。上手い下手などという問題ではなく、単純に好みではないのだと思う。世界中でたくさん読まれていて押しも押されぬベストセラーなのに読めないのは勿体無い。…ここは時間がかかっても原書で読むべきか…。
そして今日もまた本を買い込んでしまった。近頃は江國氏と梨木氏などを読む傍ら、ファンタジー小説に再燃している。現在3巻まで出ているチャイナファンタジーを買ってみた。好みに合うといい。合ってしまうとまた散財だけれど幸せだからいいのだ。
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ログインナンバーとパスワードが消えてしまって、気が付けばもう9月10日。気分は現代の浦島太郎か…。
朝夕はもうすっかり秋だ。半袖一枚ではぶるりと震えが来る。夜も7時を過ぎれば、薄手の上着を羽織っていても少し肌寒い。これからあっという間に長い長い冬がやってくる。
そんな北国の寒い夜長にはやっぱり読書が一番。今は友人から借りた梨木香歩さんの本を読んでいる。「エンジェルエンジェルエンジェル」だ。感想はまた後日書くとして、私はこの作家さんの作風を誤解していたのだと思った。もっとふんわりとして柔らかい、女性らしいファンタジーを書いているのかと思っていたのだ。いや、ある意味とても女性的な話ではあるのだが、想像以上に深くてそしてどこか悲しい。ずきんとくる痛みは、秋の夜にはセンチメンタルを読んでいい感じかもしれない。でも間違っても恋のときめきではない。甘やかなのではなく、触れれば切れるような鋭さがそこにはある。すごいひとだなあと思った。そしてこれが好評を博す今の時代というものを少しだけ不思議に思った。
借りた本はまだまだある。読みたい本はもっといっぱい。後はもう、心ゆくまで本の世界にひたれるように……仕事が暇になることを祈りたい。もう近頃忙し過ぎだ。
朝夕はもうすっかり秋だ。半袖一枚ではぶるりと震えが来る。夜も7時を過ぎれば、薄手の上着を羽織っていても少し肌寒い。これからあっという間に長い長い冬がやってくる。
そんな北国の寒い夜長にはやっぱり読書が一番。今は友人から借りた梨木香歩さんの本を読んでいる。「エンジェルエンジェルエンジェル」だ。感想はまた後日書くとして、私はこの作家さんの作風を誤解していたのだと思った。もっとふんわりとして柔らかい、女性らしいファンタジーを書いているのかと思っていたのだ。いや、ある意味とても女性的な話ではあるのだが、想像以上に深くてそしてどこか悲しい。ずきんとくる痛みは、秋の夜にはセンチメンタルを読んでいい感じかもしれない。でも間違っても恋のときめきではない。甘やかなのではなく、触れれば切れるような鋭さがそこにはある。すごいひとだなあと思った。そしてこれが好評を博す今の時代というものを少しだけ不思議に思った。
借りた本はまだまだある。読みたい本はもっといっぱい。後はもう、心ゆくまで本の世界にひたれるように……仕事が暇になることを祈りたい。もう近頃忙し過ぎだ。
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今日は私の、通算何度目になるかわからない(というより敢えて数えない)誕生日だ。携帯やPCにたくさんお祝いメールが入って、とてもくすぐったい気分になった。誕生日なんてもうどうでもいいじゃないかとも思うのだが、こんなやさしいハプニングがあると、そんな気持ちもどこかへ行ってしまい、後に残るのはただただあたたかな灯りだけになる。
月曜日なので当然仕事だったわけだが、職場でも私の誕生日を覚えていてお祝いをくれたひとが何人かいた。幸か不幸か私の誕生日は私の部署のトップのひとと同じ日なのである。ちなみに決してそのひとはいい上司ではない。だから嬉しくもなんともなかったのだが、もらったプレゼントを開けてみて、悪くないじゃないとにんまりしてしまう。プレゼントはいずれも図書券か図書カードだったのだ。よくまあ皆さん私を知ってらっしゃる。
今はいただいたプレゼントを広げて、どの本を買おうかなあなどとアマゾンのサイトを眺めてにやにやしている。通算×度目の誕生日は悪くない一日だった。何より駒大苫小牧の甲子園制覇が一面の新聞と同じ日だというのがすごく嬉しい。今日という日を皆でお祝いしているような、そんな幸せな錯覚にひたっている。
月曜日なので当然仕事だったわけだが、職場でも私の誕生日を覚えていてお祝いをくれたひとが何人かいた。幸か不幸か私の誕生日は私の部署のトップのひとと同じ日なのである。ちなみに決してそのひとはいい上司ではない。だから嬉しくもなんともなかったのだが、もらったプレゼントを開けてみて、悪くないじゃないとにんまりしてしまう。プレゼントはいずれも図書券か図書カードだったのだ。よくまあ皆さん私を知ってらっしゃる。
今はいただいたプレゼントを広げて、どの本を買おうかなあなどとアマゾンのサイトを眺めてにやにやしている。通算×度目の誕生日は悪くない一日だった。何より駒大苫小牧の甲子園制覇が一面の新聞と同じ日だというのがすごく嬉しい。今日という日を皆でお祝いしているような、そんな幸せな錯覚にひたっている。
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