夜型愛人専門店-ブラッドハウンド-DX
2004年10月25日 コミック
テレビドラマの方はまったく見ていなかったのでわからないが、コミックの方は楽しかった。まだまだ続きそうな余韻を残していたけど、続きは出るのか??
元々吸血鬼というモチーフにはひどく弱い。科学では解明できない不思議が大好きである。特に西洋の不思議には、背後にその国々の歴史や伝統や文化が潜み、息づいている。吸血鬼の伝承はヨーロッパに様々あるが、残酷だったり哀しかったり優しかったりと、伝承によってまったくその色を変える。そんな題材を日本の現代のテイストで味付けしたら、きっとこのストーリーのようになるのだろう。
吸血鬼がホストをするというこの設定は、私たちがいだいている吸血鬼の耽美なイメージが具体化された感じがする。だからこそハマりやすいのかもしれない。何か深い過去を背負った5人の個性的なホストとバーテンダーたち。その過去に何か関わっているらしい高校生莉音。この6人を主軸にしながら、いくつかの事件がオムニバス形式で進んでゆく。ほんの僅かずつ明らかになる蘇芳他4人の吸血鬼たちの暗い陰は、美しい彼らの更なる魅力のひとつとなる。
宿命の彼女であるかもしれない莉音と彼らの未来はまだすべて語られたわけではない。続きが待たれる作品である。
ISBN:4592188810 コミック 由貴 香織里 白泉社 2004/06/05 ¥610
元々吸血鬼というモチーフにはひどく弱い。科学では解明できない不思議が大好きである。特に西洋の不思議には、背後にその国々の歴史や伝統や文化が潜み、息づいている。吸血鬼の伝承はヨーロッパに様々あるが、残酷だったり哀しかったり優しかったりと、伝承によってまったくその色を変える。そんな題材を日本の現代のテイストで味付けしたら、きっとこのストーリーのようになるのだろう。
吸血鬼がホストをするというこの設定は、私たちがいだいている吸血鬼の耽美なイメージが具体化された感じがする。だからこそハマりやすいのかもしれない。何か深い過去を背負った5人の個性的なホストとバーテンダーたち。その過去に何か関わっているらしい高校生莉音。この6人を主軸にしながら、いくつかの事件がオムニバス形式で進んでゆく。ほんの僅かずつ明らかになる蘇芳他4人の吸血鬼たちの暗い陰は、美しい彼らの更なる魅力のひとつとなる。
宿命の彼女であるかもしれない莉音と彼らの未来はまだすべて語られたわけではない。続きが待たれる作品である。
ISBN:4592188810 コミック 由貴 香織里 白泉社 2004/06/05 ¥610
アイシールド21 (10)
2004年10月24日 コミック
ジャンプで連載中のアメフトコミック。もう10巻…早い…棚が占領されてゆく。週間連載物はあっという間に10冊くらい出てしまう。2か月に1冊ペースなのだから描いている人も大変だ。
アメフトはこのコミックで初めて知ったスポーツで(勿論名前は聞いたことはあるがルールをまったく知らなかった)、何でもそうだが、ルールがわかるとそのスポーツは俄然面白くなる。見た目、受け付け無さそうなスポーツでも、知れば知る程、奥が深いことに気付くのだ。まあ、少年向けということで、実際上は有り得ない展開も多いわけだが、楽しみながらスポーツを覚えるという点ではとても読みやすい。
主人公のおそらくは一番のライバルである進はファンも多いキャラクターだが、高校最強と言われる彼のトレーニングはここにきてかなり人外じみてきた…。有り得ない有り得ないと言いながら、笑って読んでしまう。個人的には彼のいるチームが一番好きだ。アメフトの名門、伝統校と言われながら、彼等の代でその王座を別の学校に奪われてしまう。その悲哀はどのスポーツの世界でもあることだろう。一度奪われた王座を再び奪い返したときの感動は計り知れない。
プロ野球に、今年で失われる球団がある。私がまだ制服を着ていた頃に一番輝いていたそのチームは、後1勝のところでリーグ制覇を逃してしまった。だがそのチームの素晴らしいところは翌年に優勝を奪い返したところだ。10.19。号泣の中で悲嘆に暮れた日である。合言葉のように悪夢の日付を繰り返し呟いて頑張ってきたそのチームは、今度こそ手にした栄冠に誇らしげな笑顔を見せた。あれから15年以上が過ぎ、来期のラインナップからそのチームの名前は消える。だが、あのときの感動を忘れることはこれからもきっとないと思う。
このコミックの未来にも、そんな素晴らしい感動があることを願っている。
ISBN:408873663X コミック 村田 雄介 集英社 2004/10/04 ¥410
アメフトはこのコミックで初めて知ったスポーツで(勿論名前は聞いたことはあるがルールをまったく知らなかった)、何でもそうだが、ルールがわかるとそのスポーツは俄然面白くなる。見た目、受け付け無さそうなスポーツでも、知れば知る程、奥が深いことに気付くのだ。まあ、少年向けということで、実際上は有り得ない展開も多いわけだが、楽しみながらスポーツを覚えるという点ではとても読みやすい。
主人公のおそらくは一番のライバルである進はファンも多いキャラクターだが、高校最強と言われる彼のトレーニングはここにきてかなり人外じみてきた…。有り得ない有り得ないと言いながら、笑って読んでしまう。個人的には彼のいるチームが一番好きだ。アメフトの名門、伝統校と言われながら、彼等の代でその王座を別の学校に奪われてしまう。その悲哀はどのスポーツの世界でもあることだろう。一度奪われた王座を再び奪い返したときの感動は計り知れない。
プロ野球に、今年で失われる球団がある。私がまだ制服を着ていた頃に一番輝いていたそのチームは、後1勝のところでリーグ制覇を逃してしまった。だがそのチームの素晴らしいところは翌年に優勝を奪い返したところだ。10.19。号泣の中で悲嘆に暮れた日である。合言葉のように悪夢の日付を繰り返し呟いて頑張ってきたそのチームは、今度こそ手にした栄冠に誇らしげな笑顔を見せた。あれから15年以上が過ぎ、来期のラインナップからそのチームの名前は消える。だが、あのときの感動を忘れることはこれからもきっとないと思う。
このコミックの未来にも、そんな素晴らしい感動があることを願っている。
ISBN:408873663X コミック 村田 雄介 集英社 2004/10/04 ¥410
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SILVER DIAMOND(3)
2004年10月22日 コミックこの本のブックレビューを書こうとしたら、アマゾンのデータベースから出てこなくて困惑した。…当たり前だった。この出版社は特別取扱だからアマゾンさんでは扱ってないのだった。それでも作者で検索すると「氷の魔物の物語」の12巻だけ出てきたので、何でだと思ったらユーズドだった…(考えればすぐわかる)。今日の私は疲れている。金曜日でおまけに締切が近いから仕方ない。きっと仕方ないのだ。
気を取り直してレビュー。画像がないのが残念なくらいカラー絵の美しい漫画家さんだ。前述の「氷の魔物〜」で一斉を風靡した彼女だが、新しいこのシリーズも独創的なファンタジーと、優しいキャラクター作りで前作のファンを魅了している。このひとの描く花は本当に柔らかくて綺麗なので、「花」をテーマにしたこの作品は、思わず見惚れる画面がたくさんある。
花や木を成長させる手を持つ「沙芽(サノメ)」の羅貫。おっとりとして常識があるんだかボケてんだかわからないキャラクターだが、穏やかな顔で心に突き刺さる鋭い言葉を持つ、ある意味主人公らしい主人公だ。冷酷で残忍に見えて、実は生まれ立ての赤ん坊に近いチグサ。常識派でおかあさんのような成重。きかん坊の末っ子みたいな灯二と、主人公を取り巻くキャラも、実に自然なそれぞれの役割を担っている。
3巻でまだまだ序章といったこのシリーズだが、後2冊くらいで舞台は整うらしい。今はまだ謎に満ちた彼女の世界が明るく解き明かされてゆくのを楽しみに待つばかりである。それにしても彼女の描く女性キャラは何というか艶めかしい。男性キャラはすっきりとして端整なタイプと、可愛らしくも男っぽいタイプに分かれるが、その誰もがどこか共感を呼ぶ部分を秘めているのがすごいと思う。どのキャラにもその立場に立つと納得して感情移入できるのだ。突拍子のない世界が広がるファンタジーという分野では、それはとても重要なことではないかと思う。
ISBN:4887416105C0979 コミック 杉浦 志保 冬水社 2004/10 ¥524
気を取り直してレビュー。画像がないのが残念なくらいカラー絵の美しい漫画家さんだ。前述の「氷の魔物〜」で一斉を風靡した彼女だが、新しいこのシリーズも独創的なファンタジーと、優しいキャラクター作りで前作のファンを魅了している。このひとの描く花は本当に柔らかくて綺麗なので、「花」をテーマにしたこの作品は、思わず見惚れる画面がたくさんある。
花や木を成長させる手を持つ「沙芽(サノメ)」の羅貫。おっとりとして常識があるんだかボケてんだかわからないキャラクターだが、穏やかな顔で心に突き刺さる鋭い言葉を持つ、ある意味主人公らしい主人公だ。冷酷で残忍に見えて、実は生まれ立ての赤ん坊に近いチグサ。常識派でおかあさんのような成重。きかん坊の末っ子みたいな灯二と、主人公を取り巻くキャラも、実に自然なそれぞれの役割を担っている。
3巻でまだまだ序章といったこのシリーズだが、後2冊くらいで舞台は整うらしい。今はまだ謎に満ちた彼女の世界が明るく解き明かされてゆくのを楽しみに待つばかりである。それにしても彼女の描く女性キャラは何というか艶めかしい。男性キャラはすっきりとして端整なタイプと、可愛らしくも男っぽいタイプに分かれるが、その誰もがどこか共感を呼ぶ部分を秘めているのがすごいと思う。どのキャラにもその立場に立つと納得して感情移入できるのだ。突拍子のない世界が広がるファンタジーという分野では、それはとても重要なことではないかと思う。
ISBN:4887416105C0979 コミック 杉浦 志保 冬水社 2004/10 ¥524
帯をギュッとね! (13)
2004年10月21日 コミック
これでオリンピックの柔道が俄然面白くなった。ハマッて読んでいた当時はまだ古賀さんが現役だった…。アテネで彼がコーチとして出ているのを見て、随分と時間が流れたのだなとしみじみ思ってしまった。
シリアスだけじゃなくてコメディだけじゃなくてほんのりいろいろあって、友情もテイストとしてうまく加味してあって、要するに1冊で何度も美味しい。少年漫画にしてはすっきりとして綺麗な絵柄だと思う。何より大勢のキャラクターたちに被ることなくそれぞれの個性を与えている。各学校のカラーがとても魅力的で、それは監督に至るまで手が抜かれることはない。
格闘技に抵抗のあるひと、スポ魂漫画が苦手なひとでも気軽に読めると思う。思わず笑いながら、思わず頷きながら、思わず握った手に力をこめながら、気がつけばすっかりとりこになった自分に気付く。きっと、10年後にまた読み返しても当時の新鮮な笑いをそのままに再現できる気がする。
ISBN:409125733X コミック 河合 克敏 小学館 2000/08 ¥710
シリアスだけじゃなくてコメディだけじゃなくてほんのりいろいろあって、友情もテイストとしてうまく加味してあって、要するに1冊で何度も美味しい。少年漫画にしてはすっきりとして綺麗な絵柄だと思う。何より大勢のキャラクターたちに被ることなくそれぞれの個性を与えている。各学校のカラーがとても魅力的で、それは監督に至るまで手が抜かれることはない。
格闘技に抵抗のあるひと、スポ魂漫画が苦手なひとでも気軽に読めると思う。思わず笑いながら、思わず頷きながら、思わず握った手に力をこめながら、気がつけばすっかりとりこになった自分に気付く。きっと、10年後にまた読み返しても当時の新鮮な笑いをそのままに再現できる気がする。
ISBN:409125733X コミック 河合 克敏 小学館 2000/08 ¥710
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のだめカンタービレ(1)
2004年10月18日 コミック
立ち読みなのだが、最近話題のこのコミックの1巻を手に取ってみた。触りとしてはなかなか面白かったが、もう既に10巻まで出ていることを考えると、揃えるか否かはかなり迷うところかもしれない。
のだめ、とはのだめぐみのニックネームである。面白いつけ方だなあと変なところに感心する。子供の頃に付けられたニックネームには、大人でもなるほどと思ってしまうようなものや、驚くような感性によるものが意外に多いと思う。クラスにひとりはそんな愉快なニックネームを考えるのが得意な子がいたものだ。…などと思い出している時点で自分も随分年を取ったなと思ってしまう。
芸術に携わる人間は普通の感性では駄目なのだなとしみじみ思ってしまった。のだめは明らかに普通の人間としては枠外である。私の部屋も大概綺麗とは言い難いが、上には上がいる…。のだめじゃなくてごみための間違いじゃないのかとつまんない駄洒落が浮かぶくらいにはすごい。そんな中でただもんじゃないピアノの音色を響かせるのだめは本当にただもんじゃない。
どうやらこの物語は、彼女と、彼女を支える…のかライバルなのかまだよくわからないが、指揮者を目指す音楽家のサラブレッド千秋とが織り成す音楽コメディ?のようだ。さて、2巻以降をどうしたものかと悩むくらいには面白かった。
ISBN:4063259684 コミック 二ノ宮 知子 講談社 2002/01 ¥410
のだめ、とはのだめぐみのニックネームである。面白いつけ方だなあと変なところに感心する。子供の頃に付けられたニックネームには、大人でもなるほどと思ってしまうようなものや、驚くような感性によるものが意外に多いと思う。クラスにひとりはそんな愉快なニックネームを考えるのが得意な子がいたものだ。…などと思い出している時点で自分も随分年を取ったなと思ってしまう。
芸術に携わる人間は普通の感性では駄目なのだなとしみじみ思ってしまった。のだめは明らかに普通の人間としては枠外である。私の部屋も大概綺麗とは言い難いが、上には上がいる…。のだめじゃなくてごみための間違いじゃないのかとつまんない駄洒落が浮かぶくらいにはすごい。そんな中でただもんじゃないピアノの音色を響かせるのだめは本当にただもんじゃない。
どうやらこの物語は、彼女と、彼女を支える…のかライバルなのかまだよくわからないが、指揮者を目指す音楽家のサラブレッド千秋とが織り成す音楽コメディ?のようだ。さて、2巻以降をどうしたものかと悩むくらいには面白かった。
ISBN:4063259684 コミック 二ノ宮 知子 講談社 2002/01 ¥410
観用少女(プランツ・ドール) (4)
2004年10月16日 コミック
プランツ・ドール。この名前そのものが綺麗だなあと思う。観賞のための生きたお人形さん。でもこの人形たちにはそれぞれの個性があって、彼女たちは眠りながら自分だけのたったひとりを待っているのだ。とてもロマンチックな設定である。彼女たちが恋うるのは若く有望な素晴らしい青年ばかりではなくて、余命いくばくもない貧乏な青年だったり、孤独な売れっ子モデルだったり、純真無垢な子供だったりする。彼女たちの武器はその愛らしい見てくれくらいしかないのに、ひとめ彼女たちと目を合わせたものはとりこにならざるをえない。彼女のためなら生活も変えるし、すべてを捧げても惜しくはないと思えてしまうのだ。人間にとってそこまでの対象を見つけられるということは、ある意味幸せなのかもしれないが。
このプランツ・ドールはあるお店でしか売られていない。その店主というのがまたおそろしく変なひとである。人形たちの管理人に過ぎないというその年齢不肖の謎めいた主人は、美味しい茶を振るまい、穏やかな笑みを浮かべながら鋭い一言で、来店する客の真実を突いてゆく。プランツ・ドールの生態も主人も謎に包まれたまま、最後の巻が出てから早くも5年が過ぎた。既に文庫化もされてしまった作品だが、このシリーズの最新作を、初めて読んだときの感動をそのままに今も待ち続ける私である。
ひととは、こんなにもやさしく甘くそして強くなれるのだと彼らは微笑んで呟くのだ。
ISBN:4257903686 コミック 川原 由美子 朝日ソノラマ 1999/03 ¥798
このプランツ・ドールはあるお店でしか売られていない。その店主というのがまたおそろしく変なひとである。人形たちの管理人に過ぎないというその年齢不肖の謎めいた主人は、美味しい茶を振るまい、穏やかな笑みを浮かべながら鋭い一言で、来店する客の真実を突いてゆく。プランツ・ドールの生態も主人も謎に包まれたまま、最後の巻が出てから早くも5年が過ぎた。既に文庫化もされてしまった作品だが、このシリーズの最新作を、初めて読んだときの感動をそのままに今も待ち続ける私である。
ひととは、こんなにもやさしく甘くそして強くなれるのだと彼らは微笑んで呟くのだ。
ISBN:4257903686 コミック 川原 由美子 朝日ソノラマ 1999/03 ¥798
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ファイブスター物語 (10)
2004年10月15日 コミック
いつ終わるんだかさっぱりわからない気の長いシリーズである。だがファンは多い。特にひっそりと読み続けているファンの多さには頭が下がる。私もその中のひとりなわけだが、とにかく新刊と新刊の間が長いので、最新刊が出る度に1巻から読み直してもう一度流れを把握し直す必要がある。
たくさんのキャラクター、飛ぶ時代。自分は今どこの話を読んでいるのか悩みながら読まなくてはならない。決して親切な本ではない。それなのにじっくりと読むのが心から楽しいと思ってしまう。絵も特殊で美しいかといえばどうだろうと思うときもあるのに、このひとでなければならないと思ってしまう。なんというか、一度好きになったらとことんまでとりこにしないと気が済まないらしいのだ、この話は。
そのくせ、この本をきっかけにして広がった友人の輪もあったりしてなかなか面白い。男女を問わずひっそりファンがみっしりとついているこのシリーズ。ゆったりとした速度で語られてゆく伝説は、まさに時間を操る神の話にふさわしい。そして神とて決して万能ではないのだと、人間と等しき苦悩の中に生きる神とそれを取り巻くファティマと騎士たち。軽快な語り口で繋がる人の連鎖は、それゆえに心にずっしりと重い。
さて、次の巻が出るのはいつ頃だろう。待つのにも慣れたわたしはのんびりと構えて春を待っている。
ISBN:4048532499 コミック 永野 護 角川書店 2000/09 ¥1,050
たくさんのキャラクター、飛ぶ時代。自分は今どこの話を読んでいるのか悩みながら読まなくてはならない。決して親切な本ではない。それなのにじっくりと読むのが心から楽しいと思ってしまう。絵も特殊で美しいかといえばどうだろうと思うときもあるのに、このひとでなければならないと思ってしまう。なんというか、一度好きになったらとことんまでとりこにしないと気が済まないらしいのだ、この話は。
そのくせ、この本をきっかけにして広がった友人の輪もあったりしてなかなか面白い。男女を問わずひっそりファンがみっしりとついているこのシリーズ。ゆったりとした速度で語られてゆく伝説は、まさに時間を操る神の話にふさわしい。そして神とて決して万能ではないのだと、人間と等しき苦悩の中に生きる神とそれを取り巻くファティマと騎士たち。軽快な語り口で繋がる人の連鎖は、それゆえに心にずっしりと重い。
さて、次の巻が出るのはいつ頃だろう。待つのにも慣れたわたしはのんびりと構えて春を待っている。
ISBN:4048532499 コミック 永野 護 角川書店 2000/09 ¥1,050
著者登録してないのか天存さん。何故か著者名で検索したら出てこなかった。タイトルを入れるとあっさり出てきてびっくり。
珍しく、というか私は初めて見たのだが、「平賀源内」が主人公のコミック第1巻である。吸血鬼と源内という相当な新釈だが、それ程突飛にも思えないのは当時の時代考証が妙にリアルだったりするせいかもしれない。得体の知れない人物や生き物がいてもおかしくないと思わせてしまうのはさすがだ。絵柄は文句なく美しい。掲載雑誌の中でも抜きん出た才能があると思う。何より身体のラインが綺麗だ(変な意味でなく)。
吸血することで人間の欲望を支配するヴァンパイア。この世のすべての謎が解きたいと望む人間。このふたりに絡む複雑な政治背景と、魅力的な個々のキャラクターたちが、今後どのように動いていくのか楽しみだ。
ISBN:4757512619 コミック 土方悠 著 スクウェア・エニックス 2004/08/27 ¥580
珍しく、というか私は初めて見たのだが、「平賀源内」が主人公のコミック第1巻である。吸血鬼と源内という相当な新釈だが、それ程突飛にも思えないのは当時の時代考証が妙にリアルだったりするせいかもしれない。得体の知れない人物や生き物がいてもおかしくないと思わせてしまうのはさすがだ。絵柄は文句なく美しい。掲載雑誌の中でも抜きん出た才能があると思う。何より身体のラインが綺麗だ(変な意味でなく)。
吸血することで人間の欲望を支配するヴァンパイア。この世のすべての謎が解きたいと望む人間。このふたりに絡む複雑な政治背景と、魅力的な個々のキャラクターたちが、今後どのように動いていくのか楽しみだ。
ISBN:4757512619 コミック 土方悠 著 スクウェア・エニックス 2004/08/27 ¥580
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ご主人様に甘いりんごのお菓子
2004年9月30日 コミック
昔からこのひとの本は好きだ。繊細なタッチの絵柄で結構シュールな話を描いたりする。そうであるがゆえに、凄惨なシーンの迫力はこの上もなく大きい。
尤もこの本の表題作は、別にそういった種類の話ではない。どちらかといえば、ほのぼのとして柔らかく、読後感の優しい話である。森の奥の屋敷で執事とふたりきりで暮らしている、若き主人ジョシュアと、本家の主人から派遣されてきたメイドのアップルビーが、互いの垣根を越えて打ち解けるまでが描かれている。
甘いものを好む(というか行き過ぎの甘党)ジョシュアは、アップルビーにデザートを所望するのだが、貧しく大人数の家族で育ったアップルビーのレシピと言えば、安い食材で栄養価の高いものばかり。何度かクビにされかけ、彼女は必死に甘いお菓子作りを修行する。何度も失敗しながら、それでも自身のプライドと、何より淋しいひとりぼっちの主人を見捨てられずに、アップルビーは彼女生来の明るさで、暗い屋敷に光を与えてゆく。
病弱な妹が倒れて自失したアップルビーを慰めるために、自身の小さい頃の微笑ましいエピソードを披露し、不器用に微笑んでみせたジョシュアはどんな二枚目キャラよりも格好いい。
この本には他に3本の話が収録されている。そのうち3本目の「651のブルー」は、作者の本領発揮とも言える辛辣な社会風刺と鋭い視線で世界を見つめた秀作である。あえて私がつたないレビューなど語るまでもない。
ISBN:4344800575 コミック 藤田 貴美 幻冬舎 2002/04 ¥840
尤もこの本の表題作は、別にそういった種類の話ではない。どちらかといえば、ほのぼのとして柔らかく、読後感の優しい話である。森の奥の屋敷で執事とふたりきりで暮らしている、若き主人ジョシュアと、本家の主人から派遣されてきたメイドのアップルビーが、互いの垣根を越えて打ち解けるまでが描かれている。
甘いものを好む(というか行き過ぎの甘党)ジョシュアは、アップルビーにデザートを所望するのだが、貧しく大人数の家族で育ったアップルビーのレシピと言えば、安い食材で栄養価の高いものばかり。何度かクビにされかけ、彼女は必死に甘いお菓子作りを修行する。何度も失敗しながら、それでも自身のプライドと、何より淋しいひとりぼっちの主人を見捨てられずに、アップルビーは彼女生来の明るさで、暗い屋敷に光を与えてゆく。
病弱な妹が倒れて自失したアップルビーを慰めるために、自身の小さい頃の微笑ましいエピソードを披露し、不器用に微笑んでみせたジョシュアはどんな二枚目キャラよりも格好いい。
この本には他に3本の話が収録されている。そのうち3本目の「651のブルー」は、作者の本領発揮とも言える辛辣な社会風刺と鋭い視線で世界を見つめた秀作である。あえて私がつたないレビューなど語るまでもない。
ISBN:4344800575 コミック 藤田 貴美 幻冬舎 2002/04 ¥840
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昔、実家ではずっとセキセイインコたちが共に住んでいた。手乗りではない成鳥だったのだが、慣れてくると私の手にも抵抗なく乗ったかわいい子たちだった。言葉を教えたりすることには興味がなかったので、我が家のインコは皆メスだった。今にして思うと番いの方があの子たちは幸せだったのだろうなあと思ったが、この寒い地方で子供が生まれてもちゃんと育たなかったのかもしれない。いずれにせよ、今はもう遠い昔の話だ。
このシリーズは1巻からずっと読んでいて、今月とうとう6巻が出た。たくさんの文鳥たちと、その飼い主で漫画家である作者との、小さな何気ないエピソードが一冊にいっぱい詰まっている。それは思い出の宝箱だ。インコと文鳥では細かい部分での違いはあるが、概ね私の中の思い出にも重なることが多い。美しく繊細なタッチとコミカルな台詞とで紡がれるタイムカプセルを開けている気持ちになれる。
小さな、本当に小さな、てのひらサイズの命は、ともすれば奢りがちな人間へ「生きている」ことの力強さと美しさを語りかけてくる。耳をすませば、小鳥たちの高く綺麗な声が、自然の讃歌を歌っているのが聞こえてくるようだ。
ISBN:4873171512 コミック 今 市子 あおば出版 2000/06 ¥683
このシリーズは1巻からずっと読んでいて、今月とうとう6巻が出た。たくさんの文鳥たちと、その飼い主で漫画家である作者との、小さな何気ないエピソードが一冊にいっぱい詰まっている。それは思い出の宝箱だ。インコと文鳥では細かい部分での違いはあるが、概ね私の中の思い出にも重なることが多い。美しく繊細なタッチとコミカルな台詞とで紡がれるタイムカプセルを開けている気持ちになれる。
小さな、本当に小さな、てのひらサイズの命は、ともすれば奢りがちな人間へ「生きている」ことの力強さと美しさを語りかけてくる。耳をすませば、小鳥たちの高く綺麗な声が、自然の讃歌を歌っているのが聞こえてくるようだ。
ISBN:4873171512 コミック 今 市子 あおば出版 2000/06 ¥683
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今日は珍しくコミックのレビューを。
大富豪であった祖父が亡くなり、莫大な資産を受け継いだたった12歳のミモザに、祖父が遺言でつけたボディガード…それがカイル。人間を信用していなかった祖父は、孫に「人間を信用するな」と言い残してロボットのカイルをボディガードにつけたわけなのだが、このミモザの純粋培養な気質と、まるでロボットと称された実際は警察の厄介者カイルとのハートフルなコメディーといったところか。
彼女の作品を読むのは久々だった。まだ学生だった頃に、「感嘆符なしでは語れない」という好きな話があって、それから夢の話(タイトルを忘れてしまった。不覚)に至るまでずっと読んでいたのだが、そこから暫く触れていない。本屋に並んでいるのを見て手に取ったのは、その設定の面白さだった。
本物のロボットのように無感情で良心の在り処もわからない青年カイルが、ミモザの純粋な愛情を通して、徐々に本当の人間になっていくのだ。冷たく冴え冴えとした瞳に怯えながらも孤独なミモザはロボットの優しさに頼ろうとする。自分を求めてくれる存在に、カイルは愛情というものを少しずつ理解してゆく。彼の悲しい過去が縛りつけていた感情を、ミモザが解凍していくのだ。
元々この作家さんの絵はとても可愛らしい。その愛らしさがともすればひどく暗くなりがちなストーリーを、柔らかく温かく照らしている。優しい、本当にやさしい物語だ。
「愛しい」「側にいたい」「守りたい」
「欲しいのはささいなものだ」
「オレは アルコールとチョコレートと ホンの少しの彼女の命令があれば生きていける――」
思わずじーんとさせてくれる切ない台詞。これでオチたと言っても過言ではない。
ISBN:4592188063 コミック 森生 まさみ 白泉社 2004/09/04 ¥410
大富豪であった祖父が亡くなり、莫大な資産を受け継いだたった12歳のミモザに、祖父が遺言でつけたボディガード…それがカイル。人間を信用していなかった祖父は、孫に「人間を信用するな」と言い残してロボットのカイルをボディガードにつけたわけなのだが、このミモザの純粋培養な気質と、まるでロボットと称された実際は警察の厄介者カイルとのハートフルなコメディーといったところか。
彼女の作品を読むのは久々だった。まだ学生だった頃に、「感嘆符なしでは語れない」という好きな話があって、それから夢の話(タイトルを忘れてしまった。不覚)に至るまでずっと読んでいたのだが、そこから暫く触れていない。本屋に並んでいるのを見て手に取ったのは、その設定の面白さだった。
本物のロボットのように無感情で良心の在り処もわからない青年カイルが、ミモザの純粋な愛情を通して、徐々に本当の人間になっていくのだ。冷たく冴え冴えとした瞳に怯えながらも孤独なミモザはロボットの優しさに頼ろうとする。自分を求めてくれる存在に、カイルは愛情というものを少しずつ理解してゆく。彼の悲しい過去が縛りつけていた感情を、ミモザが解凍していくのだ。
元々この作家さんの絵はとても可愛らしい。その愛らしさがともすればひどく暗くなりがちなストーリーを、柔らかく温かく照らしている。優しい、本当にやさしい物語だ。
「愛しい」「側にいたい」「守りたい」
「欲しいのはささいなものだ」
「オレは アルコールとチョコレートと ホンの少しの彼女の命令があれば生きていける――」
思わずじーんとさせてくれる切ない台詞。これでオチたと言っても過言ではない。
ISBN:4592188063 コミック 森生 まさみ 白泉社 2004/09/04 ¥410
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新書館のコミックである。ちなみに罰はばちと読む。
座敷わらしが主人公の、なんともレトロなお話。現代と昔が柔らかくブレンドされて、絵柄と相俟って優しい雰囲気を醸し出している。憎い家を呪いたかったはずの座敷わらしはでも、その家にとどまることで富をもたらしてくれる。妖怪の一種だったと思うのだが、この妖怪がもたらすのはひとが求めてやまないものなのだ。
そんな悲しい座敷わらしが、現代で初めて幸せになれるお話がこのコミックである。こどもに読んでほしいなあと思ったり、心が疲れたひとが読んでもきっと癒されるような気もする。現代にもこんな優しい一家がいるのだということ、受け入れることの度量の広さ、そんな家庭にこそ幸せがきてしかるべきなのだという当たり前のことに気付かされる。
心あたたまる、癒しの本だ。
ISBN:4403617611 コミック 鈴木 有布子 新書館 2004/07 ¥546
座敷わらしが主人公の、なんともレトロなお話。現代と昔が柔らかくブレンドされて、絵柄と相俟って優しい雰囲気を醸し出している。憎い家を呪いたかったはずの座敷わらしはでも、その家にとどまることで富をもたらしてくれる。妖怪の一種だったと思うのだが、この妖怪がもたらすのはひとが求めてやまないものなのだ。
そんな悲しい座敷わらしが、現代で初めて幸せになれるお話がこのコミックである。こどもに読んでほしいなあと思ったり、心が疲れたひとが読んでもきっと癒されるような気もする。現代にもこんな優しい一家がいるのだということ、受け入れることの度量の広さ、そんな家庭にこそ幸せがきてしかるべきなのだという当たり前のことに気付かされる。
心あたたまる、癒しの本だ。
ISBN:4403617611 コミック 鈴木 有布子 新書館 2004/07 ¥546
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