陰陽師

2005年2月25日 映画
これは元々原作(小説)が大好きで愛読していたものなのだが、公開当時は映画館まで観に行った。それをビデオで久々に観直した。しかしこのシリーズはなんと言っても野村萬斎氏と、敵役の俳優さんに尽きる。野村氏のあの立ち居振る舞いの優雅さと言ったら、彼の所作だけでこの映画が成り立っていると言っても過言ではない程の一級品である。さすがは能役者。直衣を着た歩き方の美しさはちょっと言葉には出来ない。

敵役の真田博之氏については語るまでもないというか、本当にこの役者さんはいい役者さんだと思う。ラスト・サムライでも素晴らしい演技だったし、彼は、どんな話でも自分のものにしてしまうところがすごい。伊藤英明氏や、その他ちょっとがっくりきた女優陣などの穴を埋めても余るというか。伊藤英明は悪くないのだが、まああの役だから合っていないこともない……んだけど、このふたりがあまりにすごすぎてかすんでしまう。まあどうしようもないことなんだが、衣装に着られているかんが否めない。女優陣に関してはノーコメント。邦画のアイタタな部分なので言ったところでどうしようもない。

どうも邦画には辛口批評になってしまうが、邦画には邦画のよさがあると思っている。来月、テレビで「半落ち」が放映されるようなので心ひそかに楽しみにしている。同じく来月放映される「ホワイトアウト」は既に一度観たことがあるのだが、あれはマイナーだけど真摯でよかったと思う。もう一度観るのがやっぱり楽しみだ。

DVD 東宝 2002/05/21 ¥6,300

スピード

2005年2月22日 映画
 ビルのエレベーターを爆破した男が、ロサンゼルス市警のSWAT隊員であるジャックに挑んできた。時速80キロ以下になると爆発する爆薬をバスに仕掛けたというのだ。ジャックはバスにとび乗ったが…。
キアヌ・リーブスがSWAT隊員のジャックに扮し、スリル感満点ののノンストップアクションを展開する。重傷を負った運転手に代わって、免許停止中にもかかわらず大型バスのハンドルを握る。この見かけとは逆の強い女を演じるのは、サンドラ・ブロックだ。そして執ような爆破犯には、嫌な男を演じさせたら天下一品のデニス・ホッパーが扮している。監督は、これが第1作目のヤン・デ・ボン。撮影監督時代の流麗なカメラワークを生かし、文字どおり息をつかせぬ緊張感あふれる傑作を作りだした。


キアヌ・リーブスをスクリーンで観た初めての作品。もう惚れた惚れた。この作品のキアヌは文句なしにカッコイイ。マトリックスのような都会的未来的な格好よさではなくて、もっと緊迫してもっと生々しい格好よさというか。サンドラ・ブロックも嫌味じゃなくカッコイイ女性を演じていて、ふたりとも大好きな作品だ。でも圧巻はやっぱり犯人役のデニス・ホッパーだろう。名優ってこういうひとを言うのだと思う。ここまで憎らしく思える犯人役もちょっとない。視線で恐怖を与えるすごい役者だ。この作品を見る度に、デニス・ホッパーに圧倒されてしまう。

DVD 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン 2004/11/19 ¥2,079
仕事も休んでいて暇だったので、久しぶりに見たけどやっぱり面白い。宮崎アニメの中では3本の指に入る。二番目か三番目に好きだ。ちなみに一番はナウシカだ…これは多分この先も変わらないと思う。タイムリーに劇場で見たクチですナウシカを…まだ小学生でした…おおなんて昔のことよ。

二番目はラピュタかこれ。ラピュタもかなり好き。でもアンケートでは一番はトトロらしい。あれ、可愛いからなあ。素朴だし。トトロも好きだがそう何度も繰り返して見たわけでもないので、私の中ではだいぶ順位が下がる。でもトトロは可愛い。猫バスも可愛い。トトロだったら部屋にぬいぐるみが転がっていても許せる。

それで、千と千尋だが、これは多分、年齢が上になれば上になるほどしみじみと好きになるような気がする。この作品の中で、おとながとうに失くしてしまった何かが鮮やかに生きているからだ。それを感じ取れるくらいにはいつのまにか時間が経ってしまったのだなあと思う。それに田舎で育ったクチなので、余計にあの湯屋で奉られている神様たちのありがたみがわかるのだと思う。あれはそういう話だ。

きっと、これからもまた繰り返してみるのだろう。その度に新しい感動を見つけられる作品に出会えたということは、とてもしあわせなことだ。ハウルも出来ればもう一度見に行きたいなあ劇場に。


DVD ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント 2002/07/19 ¥4,935

オーシャンズ 12

2005年1月30日 映画
まだご覧になっていない方、ややネタバレ傾向にあり。ご注意。

ジョージ・クルーニー、ブラッド・ピットらオールスターが集まった前作。このパート2は、同じメンバーが再集結したうえ、キャサリン・ゼタ=ジョーンズ、ヴァンサン・カッセルらが加わり、さらに豪華キャストになった。前作で奪ったカジノの大金を返せと脅されたオーシャンらは、ヨーロッパへ渡り、泥棒を繰り返す。そんな彼らに、ヨーロッパの大泥棒が「秘宝強奪で勝負しよう」と持ちかけてくる物語だ。
アムステルダム、パリ、ローマ、イタリアのコモ湖畔と、背景がロマンチックになったうえ、オーシャンらを追うユーロポール(ヨーロッパ警察機構)の捜査官と、ブラピ演じるラスティーのロマンスも進行。マット・デイモンのコミカルな存在感は、さらに際立ち、ジュリア・ロバーツの思わぬ活躍(観てのお楽しみ!)など笑える要素も倍増された。問題は肝心の秘宝強奪で、オチが分かっても、しっくりこないのが残念。ただ、そのマイナスを差し引いても、俳優たちの、演技とは思えない掛け合いに引き込まれるのは確かで、これはオールスター映画の醍醐味だろう。ソダーバーグ監督が、さり気なく挿入するこだわりの映像も見逃さないでほしい。


 2005年、映画始めは「オーシャンズ12」で。早速観に行ってきたが、さすが公開まもないビッグタイトル。映画館は人であふれ返っていた。ハウルもまだまだ人が入るのだろうし、デップの「ネバーランド」もあったりして、混雑は予想以上だった。それでも早くにチケを押さえに行ったおかげで、中央のいい席で観ることが出来た。

 感想は…実は、上記のアマゾンの批評と変わらなかったりする。さすがはハリウッド、エンターテイメント!と手を叩きたくなるようなスケールとテンポのよさはさすがだと思う。大物俳優を大勢惜しげもなく使っているだけあって、誰にスポットが当たっても魅力的で目が離せない(あのメンバーの中でも一際輝くブラピには舌を巻いたが)。それぞれの個性的なキャラや、マット・デイモンの3枚目的立場が(彼はすごく可愛かった)、ジョージ・クルーニーとブラッド・ピットを更に輝かせる。ジュリア・ロバーツの役割にも笑ったし、それに関連して出て来る大物ゲスト!(ホントにたまげた…)

とまあ、キャストやテンポにはまったく問題はないのだが、肝心の盗みが首を傾げてしまう。からくりがわかると「はあ?」と呆気に取られた。てっきり華麗な盗みが拝めるものと思っていたので、正直肩すかしをくらってしまった。

でもまあゴージャスでスタイリッシュでコミカルでスピーディな映画だった。お祭りみたいで楽しめる。映画の醍醐味はこういうところにあるんだろうなあとしみじみ。わくわくとどきどきがいっぱいある映画。
ブラッド・ピット主演のファンタジックなハートフル・フィルム。悪く言えばありがちな、どこかで見たようなストーリーのくせにやっぱり胸にじんときてしまうのは、ブラピの演技力の賜物のような気がする。彼だけではなく、死神である彼に関わる親子もすごく上手だった。切なくてやさしくて綺麗な物語。こんなクリスマス前後に見たら余計に何かくるものがある。あったかいミルクティーを飲みながらじーっと画面を見つめていた。ろくに瞬きもしないで。

これがおもしろいよと薦めてくれたひととはもう何年も会っていないけど元気だろうか? 一風変わったひとだったが、面倒見のよいひとだった。出来れば幸せな結婚をしていい奥様になっていてくれるといいと思う。そういうのが似合いそうなひとだった。

少し感傷的な気分になるのはやっぱり映画の影響なんだろうなあ。そういう力があるというだけ、こういうストーリーには力があって、使いフルされていようとありきたりだろうと、もう一度作りたいと思わせる何かがあるのかもしれない。心が疲れているときに見ると、本当にじんとくる。12月は何かと散々なんだけど、ぽわーと温められた気がしてよかったなと思う。

DVD ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン 2004/09/29 ¥2,090 65歳の誕生日を数日後に控えたビル・パリッシュがある日突然、死神の訪問を受ける。寿命を延ばす見返りに、死神は富や権力すべてを手にしているビルに人間生活の道先案内人になれと指図し、人間界を楽しむことになるが…。 ジョー・ブラックという人間の名をもらった死神とビルとの関係が、出会ったころの他人行儀な関係を越えて、男…
厳密に言えばこれは映画ではない。舞台だ。北海道のローカルな劇団による演劇だ。それなのに……すごい、これアマゾンでも買えるんだ…。ああいつのまになんて全国区になってしまったんだTEAM NACS! 道産子は勿論のこと、水曜どうでしょうの放映地域ならばご存知かもしれない。大泉洋氏所属の北海道発男5人だけの劇団である。このDVDはその劇団の最新作をまとめたものだ。

チームナックスといえば、今でこそすごい人気だが、私は当日券でも舞台を余裕で観られた時代を知っている。それがゆえに昔からのファンの人間には、嬉しくも少し寂しいこの人気急上昇。この作品は、北海道を出ようとしなかった彼らが初めて東京で公演を行い、大成功を収めた。それが去年のことだ。東京の雑誌にも、今、一番チケットが取れない劇団として取り上げられたという。東京の再演のチケは5分だか10分だかで完売したらしいし、彼らが出ている「銀のエンゼル」という映画の前夜祭チケに至っては3分で完売だそうだ。

売れっ子になった彼らは芝居の稽古の時間さえ満足に取れなくなったという。それでも、舞台を、そして北海道を忘れない彼らが大好きだ。今日、無事にこのDVDをゲット。よかった。この舞台のチケットは争奪戦に負けて取れなかったので、こんな風にDVDを一般発売してくれてとても嬉しい。お正月にゆっくりと鑑賞したいと思う。

ひとつひとつステキに魅力的に年をとりながら、勢いとパワーを忘れない最愛の劇団をこれからも追いかけていきたい。しかし来年の最新作の舞台はとうとう全国公演だそうで、ますますチケットが遠ざかる予感…。

DVD アミューズソフトエンタテインメント 2004/12/24 ¥4,179
脚本・演出:森崎博之 出演:TEAM-NACS(森崎博之 安田顕 佐藤重幸 大泉洋 音尾琢真) 北海道発、メガヒット演劇ユニットTEAM-NACSが挑む、幕末青春群像劇の傑作! 平凡な日々を憂いながら毎日を送る普通の30男、佐藤重幸。彼はある日、怪しげな男から、タイムスリップできるという薬を手に入れる。
「白き薬は10のときを遡り、黒き薬は10のときを越える…」
15包の白い薬を頬張った彼がたどり着いたのは、動乱の幕末「新撰組」の時代だった…。

(すみません。秘密日記は明日にでも)
どちらかといえば恋愛映画に興味のない私をとりこにした作品。初めて見たのはもう随分と前のことだ。当時はまだ大きな映画館が近くになく、映画館通いよりレンタルでビデオを借りてくるのが日常だった。バイト先にレンタルビデオ部があったせいでもある。

これは当時のバイト仲間に勧められて観た1本で、その前に「スピード」を観ていてサンドラ・ブロックに好感を持ったこともあり、恋愛ものだというのを知りながらも借りてみたのだった。

この映画の根底に流れるのは素朴なやさしさである。ドラマチックな展開もあるにはあるし、設定自体がひどく現実離れしたものでもある。それなのに、この話は誰にでも手が届くような日常と隣合わせで、うだつのあがらないひと、退屈な毎日を繰り返しているひとにも、奇跡やステキな出会いがあるのだと教えてくれる。夢のある作品だ。

相手役のビル・プルマンはインディペンデンス・デイの大統領役でお馴染みの役者さんだが、凛々しく雄々しい大統領とは打って変わって、地味でどこにでもいるようなひとりの若者を、気負うことなく自然に演じていてさすが役者だなあと感心した記憶がある。そんなふたりを繋ぐのは「平凡」「目立たなさ」と、それゆえに互いが持つ一途でやさしい思いである。自分よりも相手を思うシンプルな恋情が、恋愛映画にありがちなどろどろとした部分に無縁で、観終わった後のさわやかさとあたたかさが何よりの魅力だろうと私は思う。

いつもクリスマスが近くなると観たくなる映画だ。

DVD ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント 2004/05/21 ¥1,890 地下鉄の改札で働くルーシー(サンドラ・ブロック)は、クリスマス・イヴの朝にホームへ転落して昏睡状態に陥った弁護士ピーター(ピーター・ギャラガー)の家族から、彼の婚約者と勘違いされてしまい、さらには弟ジャック(ビル・プルマン)が彼女にほのかな恋心を寄せていく……。 サンドラ・ブロックが『スピード』で注目された直…
今年、映画館に観に行った作品をリストアップしてみる…。

1月 「ラスト・サムライ」(2回目)
   「ミシェル・ヴァイヨン」
   「マトリックス レボリューション」
2月 「ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還」
3月 「ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還」(2回目)
   「マスター・アンド・コマンダー」(3回)
4月 「ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還」(3回目)
  「オーシャン・オブ・ファイアー」
5月 「トロイ」
   「ディボース・ショウ」
6月 「ホーンテッド・マンション」
7月 「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」(2回)
   「シュレック2」
   「スチーム・ボーイ」
8月 「キング・アーサー」
9月 「LOVERS」
10月 「ヴァン・ヘルシング」
11月 「コラテラル」
12月 「ハウルの動く城」
上記以外に「イノセンス」「アップル・シード」

(今年中に行けたら行きたい映画の予定)
   「銀のエンゼル」「ターミナル」

わーリストアップしてみるとかなりあった。というか毎月…毎月だったのかやっぱり! ラストサムライで明けた2004年だが2回目なので、正確に言うとミシェル・ヴァイヨンなのかなー。ラスト・サムライは結局DVDも購入した。今年のものでは後、マスター・アンド・コマンダーにベタ惚れしてDVDを購入した。この作品は映画館に3度観に行ったが、これは1週間のうちに3回だ。アホな私は忙しさを理由に公開終了間際に行ってのめり込んだため、このような暴挙に出たものと思われる。マスコマはサントラも買った。映画のサントラは殆ど買わない私だが、シカゴとパイレーツオブカリビアンとマスコマだけは買ってしまった。パイレーツは今度2があるので、音楽もとても楽しみにしている。

今年も残り半月しかないが、道産子として大泉氏のファンとして「銀のエンゼル」には行けたらいいのだがもう公開終わりそう…。それと「ターミナル」もすごく気になっている。ストーリーは勿論のこと、キャサリン・ゼタ=ジョーンズが大好きなのだ。

ちなみに個人的な今年の?1はやっぱりマスコマ。次点指輪。ハウルももう一度観に行こうと思っている。意外に面白かったのはシュレック2。試写会の券をもらって行ったのだがどうしてどうして。馬鹿にしたもんじゃない。

特にハズレもなかったが、期待し過ぎて少しがっかりだったのが「マトリックス」と「ハリポタ」「キング・アーサー」「ヴァン・ヘルシング」。前者の2つは前作までがとても面白かったためで、後者2つは予告や設定が秀逸だったため。ま、期待を膨らませるというのも映画の醍醐味のひとつなので気にしない。来年もいい作品を1本でも多く観れたらいいなあと思う。

DVD ワーナー・ホーム・ビデオ 2004/05/16 ¥3,129 演じるオールグレン大尉と同様に、トム・クルーズ自身が日本の武士道に心酔していく姿が伝わってくるアクションロマン超大作。ハリウッドが撮った日本の歴史という点でも、画期的な一作である。明治維新直後の日本で、軍を近代化したい政府の要請を受け、南北戦争の英雄オールグレンが招かれる。ごう慢な態度で軍を教育する彼だったが、反…
レオのための映画。この一言に尽きる。レオ七変化。レオファンにはたまらない一本だろう。彼の瞳から尽きることなく流れる淋しい涙と共に、胸にじんとくるものがある。トム・ハンクスも好演で、彼でなければレオの哀しさはわからなかったのではないだろうかと思ってしまう程、追いかける情熱の原動力はやさしい憐憫だ。それはトムでなければ駄目な気がする。彼だからこそ感動がより深く、クリスマスの電話のシーンが生きるのだろう。何度見てもいい。これは当時、映画館に行って
見て来たものの中の1本であるが、DVDほしいなあ、やっぱり。

ところで今日は赤穂浪士の討ち入りの日だ。昨日、なんとなく忠臣蔵の最終回を見る。私の中の忠臣蔵では、やはり大石内蔵助は里見浩太郎なんだけども…。あれは何年前に放映されたのだったか。年末時代劇だったのだが、未だに忘れられない。一部と二部の間でスタッフロールの流れる中、文字の裏側では大石親子が切腹の練習をしていたのだ。あのシーンが目に焼きついて離れない。ぼろぼろ泣ける。マツケンも上手なんだけど、今年でなくても…どうも今年のあのひとはサンバのイメージが強過ぎて泣けない…。

DVD ドリームワークス 2003/08/22 ¥4,179 1963年、16歳のフランク・アバグネイルJr. は、両親の離婚を機に家出。航空会社からパイロット情報を入手し、まんまとなりすましたうえに偽装小切手も使いこなす詐欺師になる。16歳から21歳までの間に400 万ドルを稼いだ十代の詐欺師の実話をスティーブン・スピルバーグが映画化。 主役の詐欺師にレオナルド・ディカプリオ、彼を追跡…

十二人の怒れる男

2004年12月13日 映画
大学時代、吹替も字幕もなしで見た作品。しかし本当に心から感動できる映画だ。ストーリーはとてもシンプルで舞台もひとつの場所から動かず、今流行りのCGもなければ、アクションもサスペンスもない。それでいて深く心に刻み込まれ、一生忘れられない作品である。

有罪と決まりかけていた少年をひとり無罪と信じた主人公が、自分以外の11人の陪審員を、そのなめらかな弁舌と情とで「有罪」から「無罪」へと心を変えさせる物語である。

当時、英会話の課題として出されたこの映画。所謂ヒアリングの練習のためで、必死に彼の言葉を聞き取っていたことを思い出す。今も耳に残る「Not guilty」の独特の響き。司法とはこうあるべきと示した素晴らしい名作である。最高裁判所の裁判官に是非見てほしいというか、見た感想を聞いてみたいのだけど…さてさて。


DVD 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン 2004/04/02 ¥2,090 17歳の少年による殺人事件の裁判で、12人の陪審員中11人は有罪に投票するが、ひとりだけ証拠に疑問を持ち無罪を主張。白熱する議論と説得の中、ひとり、またひとりと無罪の方へ心が傾いていく…。 レジナルド・ローズのTVドラマの映画化で、テレビ版を演出した社会派の名匠シドニー・ルメットが監督。密室の中、決して名前が明かされ…

戦場のピアニスト

2004年12月12日 映画
私はCMがうっとうしいのでテレビで映画を観ることは殆どないのだが、昨日今日とめずらしくテレビの前に釘付けである。昨日は言わずもがな「ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔」で、この3部作はもう大好きでそれぞれ3回以上ずつ映画館に足を運んだ。DVDを買おうと思ってそのままになっている…のは、高いからだ。貧乏人にはちときつい。

指輪の話は後日にするとして、今日の洋画劇場は「戦場のピアニスト」。観に行こう行こうと思いつつ、気が付けば公開が終了していた作品だ。ピアノ曲が大好きな私は、たまたまつけたテレビからピアノ曲が流れているのを聴いてそこから動けなくなった。そこから先は立てるものではない。じっと最後まで観てしまった。用事を皆ほっぽらかして。

この作品は、戦争ノンフィクションにありがちな感情的なものではなく、主人公の視点から事実を淡々とありのままに描いている。ナチスドイツのユダヤ人迫害をテーマにした作品は数多いが、その中でも(いい意味で)異色なのではないだろうか。必死に生き抜こうとするシュピルマンの姿から、当時の悲劇がよりリアルに伝わってくる。そこにはただ悲しいだけではなくて、微かでありさえしても希望があって、ラスト近くのドイツ人将校の存在がこの作品をより美しくはかなく、やさしいものにしている気がした。またこの将校を演じられた俳優さんの瞳の美しさが目を惹く。彼はシュピルマンとは反対に、悲劇的な最期を迎えてしまうのだが、ラストにその事実だけがテロップで流れ、より一層哀しさを誘った。

ピアノの美しい音色と共に、これから先も心に残る作品である。かつて同胞らが生きていた場所。すっかり廃墟となった静けさの中、ぼろぼろになって脚を引き摺るシュピルマンが印象的である。


DVD アミューズソフトエンタテインメント 2003/08/22 ¥3,990 2002年のカンヌ映画祭においてパルムドールに輝いた『戦場のピアニスト』は、ロマン・ポランスキー監督が指揮することを運命づけられた映画である。幼少時代をナチス占領下のポーランドで過ごしたポランスキー監督こそが、ユダヤ系ポーランド人のピアニスト、ウワディスワフ・シュピルマン(エイドリアン・ブロディ)の自伝を映画化するに…
アマゾンでの売上人気2位……さすが。それなら一般書店で探そうとしてもなかなか見つからないわけである。ネット注文の方が早いかな?

映画は日曜に観てきた。混雑を避けて朝一番の回で行ってきたのだが、朝早くのせいなのか子供たちは皆おとなしく腰かけて映画を楽しんでいたようだった。おかげで私もゆっくり楽しめて満足。

ストーリーは今までの中でもかなりわかりやすく易しい方だったと思う。シンプルな原作に、宮崎風の味付けをした料理といった感じ。CGが違和感なくとけ込みながらも、アナログのやさしい風合いが生き生きとした画面はさすがだった。

一番驚いたのはキムタク・ハウルが想像以上にハマッていたことだ。大変失礼ながら、周囲のキャラの声優の殆どがベテラン舞台俳優中心だったため、彼だけが浮いてしまうのではないかと思っていたのだ。でも、軽くて気弱でやさしくて一途なハウルを、キムタクはとても丁寧に演じていたように思う。彼自身の癖を出来るだけ廃していたので、最初は誰が演じているのかわからなかったくらいだ。

時間の都合だろう。どうしても省かれざるを得なかった設定のせいか、上映終了後も疑問がいくつか残った。それでも、改めて原作を読んでからもう一度じっくりと味わいたい作品だと思った。上映後の夢から覚めたような余韻がこのひとの作品のたまらないところだと思う。今回もとてもやさしくて美しい夢を見せてもらった。

ISBN:4198607095 単行本 西村 醇子 徳間書店 1997/05 ¥1,680

コラテラル

2004年11月13日 映画
DVD ロサンゼルスで平凡なタクシー運転手として12年間働いてきたマックス。だがそんな彼が乗せた客は、夜明けまでに5人の殺しを依頼された殺し屋ヴィンセント。このヴィンセントの“足”にならざるを得なかった彼だが、ついにスキをついて反撃に出る!
何がいいってトム・クルーズの悪役ぶり。どこか卓越していて、殺すことが完全に仕事になっているその非情さ加減、目がイッちゃっている感じも含めてひたすら怖い! それでいてどこか孤独なことに憂鬱を感じている雰囲気さえ見えるのが不思議。そう、冷酷無比なのに魅力的なのだ。これはやはりトム自身から発されている、彼を好きにならずにはいられない独特のオーラが原因しているのだろう。そんな彼の魅力を見越したストーリーテリングをしたマイケル・マン監督の勝利ともいえる


今日は「コラテラル」を観に行ってみた。まず映画館の人の少なさにびっくり! …何かイベントとかあったっけ? 首を傾げるくらいチケット売り場に人が少ない。「コラテラル」は映画館で2番目に大きいシアターで上映されたのだが、空席がおそろしく目立った。謎。

さて、肝心の映画だが、んーやはりトム・クルーズのための映画といった感じだった。でも冷酷無比な殺し屋にしては、トムの顔は柔らか過ぎたような気がする。確かにひげをはやして幾分視線をきつくはしていたものの、ラスト・サムライのときのような役柄ならともかく、一晩に数多くの殺しを行うヒットマンというイメージには少し遠かったような。

巻き込まれ(コラテラル)た可哀想なタクシードライバー役のジェイミー・フォックスは演技派。脅迫され、そのうちに逆ギレし、トムからターゲットの女性を救うまでの心の動きがとても明解でわかりやすい。表情のひとつひとつに彼の細かい演技を見た。しみじみ巧いなあと思わせる役者。嬉しかったのは、その救われる敏腕検事役の女性に、マトリックスのナイオビ役でお馴染みのジェイダ・ビンケット・スミスが出演していたことだ。このひとは本当に好きだ。凛として、頭のよいハンサムな女性で憧れる。

結局トムだけが微妙に浮いていたような…少しストーリーが薄かったかな? 結末がかなり序盤の方で見えていたのが残念。でも全編通して行き詰まる緊張感があって、目を見開いてじっくりと観たのは本当。テンポがよかったのだろう。映画館でこそ生きる作品。そしてトム・クルーズファンなら観ておくべきだろう。彼のための映画なのだから。あ、銃の扱いはさすがだった。殺しのテクというか魅せる演技はさすがトム・クルーズ。ちなみに私はトム・クルーズが好きだ。
上映終了間近になってようやく観てこれた。今日から公開の映画が多くて映画館自体は大変混んでいて、近頃の映画人気ぶりを表すようだった。更に今日は地元北海道で活躍中の鈴井貴之監督作品「銀のエンゼル」も北海道先行公開開始で、鈴井氏や大泉氏の舞台挨拶もあったらしい。ふたりとも大好きなので観たかったが、おそらくチケットは取れなかっただろうな。

さて、ヴァン・ヘルシングだが、巷の噂どおり詰め込み過ぎな映画だった。批評ほどひどい映画でもないと思ったが、いくら娯楽映画とは言え、あまりに有り得ない展開があったり、ラストでヒロインが死んでしまったりしてぽかんとする場面もあり。音楽はゴージャスだなと思ったけど、盛り上がり系の音楽が多過ぎて、結局どこを一番見せたかったのかわからなかったような…。対決するモンスターはヴァンパイアとウルフマンだけで良かった。フランケンとジキルは余計だったというか、ストーリーをちゃちにしてしまった気がする。

それで結局ヴァン・ヘルシングの過去はどうなったのだろう? エンディングのスタッフロールが流れる中、脳内の疑問符を片付けるのに必死になったが、謎は何ひとつ解明されていない気がする。ただ発想としてはおもしろいし、娯楽としては楽しめるとは思う。どこかひとつに視点を絞って描かれるべきだったのだろう。折角あの吸血鬼があそこまで存在感のあるキャラなのだから(むしろ主人公がかすんでいた)、他は廃してそこだけに焦点を絞るともっとおもしろかったかもしれない。

ところで指輪物語のファラミアが出ていた。懐かしかった…。いい役を演じていて嬉しかった。
今年の1月に観に行った映画だ。

モータースポーツファン歴が10年を超える私にとっては、原作がコミックであるとか何とかはむしろ付属のことで、題材が「ル・マン24時間」であると聞けば、観に行くのは必然のことだった。

ヨーロッパ映画を観るのは滅多にないことで、それゆえか、出演している俳優は誰も知らなかった。でも主役のミシェル役の俳優さんは目許の涼しげな綺麗な俳優さんで、レーシングスーツがすごくよく似合っていた。ライバル役の俳優さんとの対比がよかったと思う。ストーリー的にはさすがコミックと言うような部分もあったが、レースシーンの迫力には息を呑むものがあり、よく録れていたと思う。耳に残るエギゾースト・ノートはいつ聞いても心地良い。赤と青のマシンは、アスファルトの上で眩しく目に映った。ミシェルと恋に落ちる女性もレーシングドライバーである。嫌味な感じのない、男っぽくもあり女らしくもある女優さんで好感が持てた。

24時間続くレースの間の緊張、喧騒、動揺、数多く起こるハプニング、チームスタッフのモニターを見つめる真剣な目、擦れたタイヤ、カウルの鈍い反射、そのすべてが心踊るモチーフだ。実際のル・マンでは目にすることの出来ない裏側の苦悩や苦労や汗の結晶を見ることが出来て、それだけでこの映画は良かったと思う。正直、見る前の期待度よりはずっと出来が良かった。さすがはリュック・ベッソンといったところか。

またこんな風にモータースポーツを題材とした映画に会えると嬉しい。


DVD アスミック 2004/07/09 ¥4,179 ヨーロッパで大人気のコミックを、リュック・ベッソン脚本(本人も一瞬登場!)で映画化。カリスマ的な強さを誇るカーレーサー・ミシェル率いるチーム「ヴァイヨン」が、長年の宿敵チーム「リーダー」とル・マン24時間耐久レースで決着をつけようとする。しかし、リーダーの陰謀でミシェルの仲間が事故死。さらにル・マン直前にミシェルの…

LOVERS

2004年9月22日 映画
今日は久々に映画のレビューを。先日LOVERSを観に行ってきた。英雄にも出演したチャン・ツィイーが主役である。チャイナ美人な彼女には自国の衣装がよく似合う。英雄もそうだったが、この2作の中国映画で一番惹かれるのは衣装だ。布の使い方がおそろしく美しい。今回の映画でもチャン・ツィイーの舞いで流れる水のような衣装は圧巻だった。

今回は彼女を舞いを観に行くという目的であって、実のところ映画そのものに期待をしていたわけではなかった。英雄のときもそうだったからだ。…しかしまあそれにしてもあまりにお粗末なストーリーで呆れてしまった。一応はミステリー仕立てに近いのだと思うが、序盤でラストまでがすべてわかってしまうのはどうなんだろう。予告程に客を騙してなどいない。それぞれの正体や思惑にも意外性はどこにもなかった。

あと無駄にラブシーンが多い。別に暗転でもよかったんじゃないだろうか。その分で、歴史的に魅力ある背景の方をもっと書き込んでほしかった。折角の飛刀門という設定がちっとも生かされていなくて悲しくなる。愛を主題にするのであっても、ラブシーンはさらりとでいい。何だか異様になまなましくて引いてしまった。

数日経って、心に残るのはやはり小妹の舞い、そして殺陣である。それ以外の魅力は残念ながらあまり感じなかった。二度は行かない。

DVD 西暦859年、唐代の中国で、朝廷は反乱軍最大の『飛刀門』撲滅を画策。官史の金と瀏に、指導者を10日以内に捕らえるように命ずる。飛刀門の娘と思われる小妹は目が不自由で、金は反乱戦士を装い小妹に接近。捕らえられた彼女を救出するふりして、敵のアジトまで導かせようと企むが、旅の途中でふたりの心はひかれあってしまう。 小妹に…
前々から観ようと思って前売りを買っておいたのだが、今日ようやく行く事ができた。既に観に行った友人たちから散々釘をさされていたのだが、とにかくこの作品と「アーサー王と円卓の騎士」の話を結び付けてはいけないという。別物だと思えば楽しめるという話どおり…だった。

別物といわれても、アーサーやランスロットと聞けばどうしたって期待してしまうのが人の性だと思う。そういう意味でこの作品はいっそ、まったく別の騎士物語にした方が良かったのではないかと思ってしまった。とにかく話が違うのだ。アーサー王伝説のモデルになった人々の話という触れ込みらしいのだが、それならば彼らの名前はオリジナルにすべきではなかったのかと思わざるをえない。アーサーに関係のない、架空の騎士物語であったのなら、もっと楽しめたような気がした。要するに中途半端なのだ。

正直、この映画が「アーサー王伝説」と勘違いしてしまったひとがいるなら、今すぐに原作を読んでほしいと思う。まったく別の世界がそこには広がっている。

個人的にキーラ・ナイトレイ演じるグウィネヴィアだけはいい感じだと思ったが、ジェフリー・ブラッカイマーは彼女にこういう役しか回さないつもりだろうか…。確かに彼女ほど雄々しく美しい女を演じることが出来るひとはそうはいないと思うのだが。

作品として、目のつけどころは悪くないような気もするので勿体無い気もした。
ここ数年、すっかり映画にハマッている私だが、その中でも最近特にのめりこんだ作品がこれである。

まず海が好きで海賊が好きで海軍が好きで男の友情が好きで…なんてひとにはたまらない映画だ。これは映画の予告があまりに作品と掛け離れていて随分と問題にもなった作品である。予告では、主役のオーブリー艦長の部下であるブレイクニー少年が、あたかも倒れた上司の代わりに自分が船を指揮して勝利したように見えたものだが、実際はまったく違う。違い過ぎて思わず笑ってしまった。

主役は誰がどう見ても、ラッセル・クロウ演じるジャック・オーブリーである。彼は途中で指揮を誰かに委譲したりしないし、最後まで素晴らしくカッコイイ、それでいて人間味の溢れる艦長だった。そして忘れてはならない準主役は、ブレイクニー少年ではなく、オーブリーの親友であり、船医でもあるマチュリンである。この役を演じるポール・ベタニーがまたおそろしく上手い。視線だけで観客をとりこにするなんてすご過ぎる。彼は台詞を言葉よりも視線でより多く語る。親友への気遣い、自身の研究への情熱、そして船と船員たちに対する愛情。どれを取っても彼の心はその瞳に一番よく現れている。

最近、原作を読んでいるため、この映画が原作をかなり創作したものだということはわかっている。だが、私はこれはこれで十分楽しめる作品だと思う。原作の少し間抜けでカワイイ艦長と船医も愛しいが、映画の中の素晴らしいカリスマで皆をまとめ、「ラッキー・ジャック」の呼び声も高い漢前オーブリーと、自身の研究に心を残しながらも親友のためにひと肌脱ぐ友情篤きマチュリン船医もこの上なくいとおしいのだ。

百聞は一見に如かず。回りの評価など気にせず、まずは一度ご覧になることをオススメする。一週間に3度も同じ映画を見てしまった、初めての作品である。2を作るとか作らないとかいう話があるようだが、それはどうなのだろうと傍観している今日この頃…。続編にいいものは少ないのでつい警戒してしまうのは悲しい性かもしれない。



DVD ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン 2004/07/23 ¥4,179

ナポレオン率いるフランス軍が、各国に侵攻していた19世紀初頭。不敗神話を誇る、イギリス軍の艦長ジャック・オーブリーが率いる「サプライズ号」が、フランスの武装船に果敢な攻撃を挑む。艦長役でオスカー俳優ラッセル・クロウが主演。ハリウッド王道の超大作とはちがい、さまざまなポイントで興奮と感動を与える海洋アクション・ロマン…

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