このシリーズも早いものでもう12冊目。尤も、本国では22冊目が出るらしいが……筆者はすごいハイペースで本を出しているのだが、どんどん本は分厚くなるので本当にすごいと思う。それに伴い、単価も上がっているのですごいと思う…(それでなくても今月はFSSの最新刊が高かったのに。まったくもって懐が寒い)。

今度の新刊の特筆すべきところと言えば、やはり「弱気なローク」だろうか。ともすれば傲岸不遜とも取れる自信たっぷりで余裕しゃくしゃく、痛めつけられ、追い詰められたイヴを格好良く、それでいてあたたかく包んで癒すのがいつもの彼であると思うが、今回はまったくその立場が逆転。彼のウイークポイントを次々に突かれ、為す術もないことでひどく弱気になり、情緒不安定になったロークを、不器用だがやさしいぬくもりで癒すイヴというのが今回の構図だった。

私はこういうのが苦手なの! と言いつつも懸命に、恋に傷付いたピーボディを慰めたり、サマーセットを守るために真実の言葉を惜しげもなく口に出すイヴは今回本当に格好いい。あの不器用さが、捜査に関してはほぼ完璧といっていい鉄壁の理性と正義の精神のイヴを、かわいらしくも格好よく見せることに成功している。

それにしても、もうこれ以上ロークが彼の数少ない本当に大切なものを失うことがないようにと願うばかりだ。ラストシーン近く、クライマックスでの親友との別れは、手に入らないものはないといわれているロークのてのひらから、彼のお金に替えられないたからものが消えてゆく切ないシーンに胸をしめつけられる。

本国の方の最新刊(つまりは22冊目?)では、イヴを痛めつけた義母が出て来るとか出てこないとかいう話である。彼らが過去に本当の意味で決別して歩める未来は、まだまだ遠い先らしい。

ISBN:4789728498 文庫 青木 悦子 ソニー・マガジンズ 2006/04 ¥893

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