近頃のマイブームというやつです。もっと早くに手を伸ばしておけばよかったと後悔。きっかけは、深夜、ふとテレビをつけたら放映していたアニメ。基本的にアニメには殆ど興味がないのだが、これはテレビの前にうずくまったまま、そのままの姿勢で最後までじっと見てしまった。設定と言い、雰囲気と言い、絵と言い、キャラクターと言い、ストーリーと言い、久々にどかんときた当たり本。

現実と幻想の間を行ったりきたりするこの話の根底には、日本という国にしかない独特の情緒がひそんでいる。せつなさ、孤独、やわらかいが決して越えることのできない障壁。特別であることを何より恐れる、日本という国の民の弱さと、たったひとりきりでも確かに生きている強さとを、鮮やかな筆で描き切る。

この話は基本的に1話完結であるが、すべての話に共通して出ているギンコという蟲師が、錆びの間から鈍く光る鍵を握りしめている。個人的には彼の過去を描いた話が一番好きだ。ひとりきりで生きている彼の強さと弱さと、そしてやさしさの理由を、甘い痛みと共に闇に浮かび上がらせている。

闇はちかしいもの。そしておそろしいもの。

彼はまだ、ひとでいられる。彼を必要とするひとがいる限り。

ISBN:4063143813 コミック 漆原 友紀 講談社 2005/06/23 ¥620

コメント

お気に入り日記の更新

日記内を検索