久々に出たお待ち兼ねの新刊。前回のカサンドラは個人的には今イチだったのだが、今回は文句なし。大体クリスティーファンの私にはいろいろな意味でたまらない1冊だった。そうか、検察側の証人か…。なるほどと頷きつつ。それにしても今回も厚い。発行ペースが落ちているのは、この厚さに翻訳が追い付かないのだろう。大変だなあと他人事のように。私も今月中に1本まだ残ってるんだけど…ハハハ…。

この本でなんといってもよかったのは、イヴがロークのために悪戦苦闘してディナーの用意をするシーン。いつもの冷ややかな表情を装いつつ、あたたかく微笑ましく、必死なイヴにさりげないアドバイスをするサマーセットがかなりツボ。彼は本当にいい味を出している。ただ甘くなりがちなふたりの屋敷でのシーンに、様々な色を乗せてくれるのが彼だ。きっと、歩き始めた娘を見守るような気持ちだったのだろう。反抗期の娘と、対応に慣れた父親のシーンを見るようで可笑しかったり微笑ましかったり。

そして帰宅したロークは当然のことながら度肝を抜かれていた。あのロークがぽかんとするなんて。仰天して立ちつくすなんて、早々見られるシーンではない。しかし日頃の行いがものをいうなあと思ったのは、見かえりは何かとしつこく訊くロークだ。イヴは当然怒っていたけど、ロークのあの反応は無理からぬことだと思うわけで…。イヴは自業自得なわけで…。でもその後必死のロークのとりなしで、甘く熱い夜を過ごした彼らなのだった。

今回はクリスティーネタだったせいもあって、オチに予想はついていたのだが、軽快なテンポと、サマーセットやピーボディたちの脇のちょこちょこっとしたエピソードが楽しくて、一気に読めてしまった。気が付いたら朝だったというのはご愛嬌。

このシリーズの次の新刊もこんな風に楽しめたらいいなと思う。

ISBN:4789727114 文庫 小林 浩子 ソニー・マガジンズ 2005/11 ¥882 イヴ&ローク10

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