何故かアマゾンでは出てこなかったので、今日は楽天からレビュー。大好きな江國香織氏の新刊である。朝日文庫って普段はあまり目がいかない。なので、この本の発売もたまたま見つけたのだった。探していたのは河出の長野まゆみ氏の新刊文庫だったのだが、その近くに偶然この本が積んであったのだ。見つけられてよかった。

ハードカバーのときに、ちらりと立ち読みしたことがある。短編集なのだが、世界は同じで繋がっている連作だ。主人公が1本1本で変わるものの、みな、同じ女子高に通う子ばかりで、同じ人間が別の視点から語られるとまったく違う印象を与えるのがおもしろい。

このひとはなんというか、とりたてて何もないが微妙に不幸、といった境遇の人間を書くのがとてもうまいと思う。流せるくらいの不幸せだから気にしていない風を装っているのに、何もなく変化もとぼしい日常の中での小さな不幸せは、時折耐えきれない程の不協和音を生む。そうすると、一見バランスを保っているように見えた世界が音を立てて崩壊する。そんな、冷たく静かな悲劇を見た。

誰もが普通に暮らしているようで、誰もが幸せではない。深く興味をいだけるようなものがない日常というのは、これほどまでに乾いているものなのか。何気ない日々と女子高という限られた狭い世界の中を淡々と描いただけの小説なのに、背中が、ぞくりとした。

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