エマ (2)　　森薫

2005年4月8日コミック

彼女の生い立ちはなかなかヘヴィである。メイドになるまでの間の彼女の暮らしぶりには深い陰が落ちている。親の愛情を知らず、親類の冷たい仕打ちに遭い、売り払われ、そこから逃げ出し、ひとりきりで最低の生活をしながら、彼女に見初められるまでの時間はおそらくこの先彼女がどんなに幸せな人生を歩もうとも、傷として残ってしまうのだろう。愛されて守られて当然の幼少期を、彼女は過酷な日々と戦ってきた。そうであるがゆえに、若くして夫と死に別れた気難しい老婦人であっても、深く慕い、母のように愛していたのだろうと思う。

彼女のひそやかな恋を、身分差などものともせずにその背中を押す老婦人の瞳は、まるで本物の母親のようにあたたかい。

ISBN:4757713126 コミック森薫エンターブレイン 2003/02 ￥651