心待ちのシリーズ最新刊。なんだかショウが哀しい方向に悟りを開き始めてて(でも願いが消えることはないから余計に苦しんでいる感じ)、ドクターは彼の残酷なまでの鈍感さを思いきり真正面から突き付けられた回だった。要するにふたりともが苦悩する回。でも重いと感じるより先にページをめくる手の方がずっと早かったのは、ミステリー仕立てのおかげだろうか。まあ犯人は最初からわかってはいるのだが、からくりを上手に組みたてていたのではないかと思う。

それにしてもレーンはいいなあ。大奥を強化して開いた感じかも。ああいう決して表立つことはないものの、相応の権力を持ち、独立した社会として成り立っている世界への興味は尽きない。でも、そこに生きるひとびとの足には抜けない枷がつき、華やかな夜の後にやって来る沈んだ朝が、彼等の悲しさをすべてさらけ出してしまう。それも特徴のひとつだろう。だからこんなにも惹かれるのかもしれない。

どうも私は「切なさ」に弱いらしい。幻想の中で一番美しく、そして切り込むような鋭さで輝く花だからだろう。

ISBN:4044465061 文庫 雪舟 薫 角川書店 2005/03/31 ¥480

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