素直に面白いと思った本。タイトルと綺麗でシンプルな表紙に惹かれて買い求めたのは春だったのだが、買ったきり忙しくて存在自体を忘れていた。先日、棚の整理をしていて見つけ出し、今日休憩中にカフェでじっくり読んでみたのだった。
「つきさかな」と読むものだと勝手に思い込んでいたら「げつぎょ」だった。――つきさかなってアンタ。
主人公は若き古書店主と古書の卸売りをするふたりの青年。過去に共通の傷を持ち、互いに互いへの強く微かに甘い執着と罪の痛みとほのかな某かの思いを抱え、古書を通してふたりは過去へと帰ってゆく。意外な場所での意外な人物との再会が、忘れようと努めていた過去最大の事件をもう一度呼び覚ます。壊れるのが怖くて、過去に触れられなかった彼と彼。とある村の未亡人と、彼女の亡き夫が残したたくさんの古書が、彼らとありし日に失ったもうひとりの人物とを引き会わせ、すべてがそこで精算される。
キーワードは「月」「古書」「菜園」「池の主」。ただ結びつけてしまえば陳腐になりがちなこれらを絶妙のバランスで配し、やさしい結末へと導いてゆく。彼らの凍結していた未来が今、動き出した。
本編の後に掲載の2本の掌編は、彼らのみずみずしくも切ない過去が描かれているが、幸福を予感させる未来を知ってから読むと尚一層その美しさがいとおしく思える。
ISBN:4043736029 文庫 三浦 しをん 角川書店 2004/05 ¥540
「つきさかな」と読むものだと勝手に思い込んでいたら「げつぎょ」だった。――つきさかなってアンタ。
主人公は若き古書店主と古書の卸売りをするふたりの青年。過去に共通の傷を持ち、互いに互いへの強く微かに甘い執着と罪の痛みとほのかな某かの思いを抱え、古書を通してふたりは過去へと帰ってゆく。意外な場所での意外な人物との再会が、忘れようと努めていた過去最大の事件をもう一度呼び覚ます。壊れるのが怖くて、過去に触れられなかった彼と彼。とある村の未亡人と、彼女の亡き夫が残したたくさんの古書が、彼らとありし日に失ったもうひとりの人物とを引き会わせ、すべてがそこで精算される。
キーワードは「月」「古書」「菜園」「池の主」。ただ結びつけてしまえば陳腐になりがちなこれらを絶妙のバランスで配し、やさしい結末へと導いてゆく。彼らの凍結していた未来が今、動き出した。
本編の後に掲載の2本の掌編は、彼らのみずみずしくも切ない過去が描かれているが、幸福を予感させる未来を知ってから読むと尚一層その美しさがいとおしく思える。
ISBN:4043736029 文庫 三浦 しをん 角川書店 2004/05 ¥540
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