先日のレビューの「バンダル・アード=ケナード」と同じ作家さんの作品なのだが、あちらとは打って変わって華やかな舞台の中の退廃と孤独と切なさを描いたシリーズである。BLではない…そうなんだが、何というか五十歩百歩のような…まあ面白ければジャンル分けなど、どちらでもいいのだが。

この本はシリーズの2冊目にあたる。1冊目でもその出自とは裏腹に一途で真っ直ぐな心の持ち主であったショウは、彼のその純粋な部分が2巻で更に際立っているように思う。鈍いと言うか天然と言うかいっそ清々しいくらい回りが見えているようで見えてないレイと無事に幸せになれるのはいつのことやら。レイは己の幸福度がわかっていないようでいて、ふと、ショウに対するあたたかな気遣いを見せたり、知らず知らずのうちに彼の望むことを叶えてやったりする。ある意味、レーンにおいて最も魔性度が高いのは、一件世間知らずのあの医者のような気がしてならない。

作者である駒崎優氏は現在このシリーズの3巻目を執筆中らしいと、彼女の大ファンである友人から伝え聞いた。さて、次の巻でこのふたりの距離はどれほど縮まっていることか…。何気に一番美味しいシーンを総取りしている彼らの友人であり、金の城の宝石でもあるヒューの役どころも気になるところではある。
 

ISBN:4044465053 文庫 雪舟 薫 角川書店 2004/05/28 ¥480

コメント

お気に入り日記の更新

日記内を検索