私が一番熱心にF1を観ていた頃、このひとの解説が一番好きだった。穏やかでやさしい声で、モータースポーツがどれ程魅力的であるかを教えてくれた。彼にも勿論贔屓のチームやドライバーがいるのだが、レース中にそれを悟らせるような発言は殆どしない。(もちろん、日本人ドライバーやメーカーに愛情を示すのは除外して) どのドライバーやチームのファンにとっても公平な解説は聞いていて心地よかった。

この本が出たとき、喜んで発売日に買い込んだのを覚えている。場所を取るのでハードカバーは滅多に購入しないのだが、この本は別だった。最愛のドライバーが引退し、F1の魅力が半減してしまった今でもこの本は大事に読み返している。彼のこの本を読んで、モータースポーツジャーナリストに憧れた。この職業につくにはたくさんの国の言葉がわかり、モータースポーツのみならず、様々なジャンルの知識が必要であると知ったが、尚更憧れは募った。彼がいなければ、あんなにも熱心にF1を観ることはなかったかもしれない。初心者にもわかりやすく、そして面白くF1というものを教えてくれたこのひとは、モータースポーツ界にとってなくてはならないひとだと思う。

この本を読むと、雲の上のひとのような天才ドライバーでさえ、とても身近に感じられて嬉しい。それは今宮さんの人柄あってこそのものなのだろう。モータースポーツ界の光と影を、彼の通ってきた道と経験から楽しく、そして真剣に語る本である。こんな本はちょっとない。

ISBN:4895222306 単行本 今宮 純 三樹書房 1998/08 ¥1,575

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