どちらかと言えば得手のジャンルとは言えないミステリーだが、このシリーズだけは大好きで、新刊が出ると飛びついて買っている。臨床犯罪学者火村&推理小説作家アリスのコンビものだ。
文庫化されたものの中では一番新しいこの本。個人的にミステリー作家は短編が上手くてナンボと思っている私にはうってつけの短編集である。これには6本の短編が収録されているが、タイトルにはいずれも建物というか迷宮の名が冠されていて、クリスティーあたりを思い出す。
軽快なリズムで進むストーリーには、繊細な伏線がいくつも張られていて、ラストまで読み終わった後にようやくそのことに気付いて目を瞠る。ミステリーは作者に騙されてこそ。その楽しみを1冊で6度も味わえるのだからやめられない。
その退屈させない話運びも勿論だが、このシリーズに出てくる個々のキャラクターが実に生き生きとしていて、読者の感情移入を容易にしている。何か暗い過去のあるらしいクールで女嫌いの犯罪学者は実際、子供が好きで猫が好きで、親友には心を開いていたりするし、一見朴訥としてお人好しの推理作家は、何気ない言葉の中で鋭い視点を披露したり、人と人との関係に不器用な親友のフォローを見事にこなしていたりする。彼らを取り巻く刑事や犯人やその他の出演者たちも、調和の中ではみ出さない程度に興味深い個性を見せてくれる。
このシリーズがゆったりとした速度で、それでも長く続いている理由はきっとこのあたりにあるのだろうと思う。次回、ふたりはどんな距離でどんな秘密を見せてくれるのだろうか。ミステリー以外にも楽しみはたくさんある。
ISBN:4101204330 文庫 有栖川 有栖 新潮社 2004/01 ¥620
文庫化されたものの中では一番新しいこの本。個人的にミステリー作家は短編が上手くてナンボと思っている私にはうってつけの短編集である。これには6本の短編が収録されているが、タイトルにはいずれも建物というか迷宮の名が冠されていて、クリスティーあたりを思い出す。
軽快なリズムで進むストーリーには、繊細な伏線がいくつも張られていて、ラストまで読み終わった後にようやくそのことに気付いて目を瞠る。ミステリーは作者に騙されてこそ。その楽しみを1冊で6度も味わえるのだからやめられない。
その退屈させない話運びも勿論だが、このシリーズに出てくる個々のキャラクターが実に生き生きとしていて、読者の感情移入を容易にしている。何か暗い過去のあるらしいクールで女嫌いの犯罪学者は実際、子供が好きで猫が好きで、親友には心を開いていたりするし、一見朴訥としてお人好しの推理作家は、何気ない言葉の中で鋭い視点を披露したり、人と人との関係に不器用な親友のフォローを見事にこなしていたりする。彼らを取り巻く刑事や犯人やその他の出演者たちも、調和の中ではみ出さない程度に興味深い個性を見せてくれる。
このシリーズがゆったりとした速度で、それでも長く続いている理由はきっとこのあたりにあるのだろうと思う。次回、ふたりはどんな距離でどんな秘密を見せてくれるのだろうか。ミステリー以外にも楽しみはたくさんある。
ISBN:4101204330 文庫 有栖川 有栖 新潮社 2004/01 ¥620
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