隠されし月の誓約―スカーレット・クロス
2004年10月4日 読書
「彩雲国物語」より前から読んでいるシリーズである。元々「ヴァンパイア」という設定が大好物の私は、友人が貸してくれたこのシリーズの第一巻を読んですぐに同じ本を買った。神父×吸血鬼なんてまあなんてマニア向けな。しかも神父は完全な人間ではなく、聖女と呼ばれた人間の女性と伝説の吸血鬼との子供だというのだからたまらない。ファンタジー好きは寄ってこいと言わんばかりの設定である。表紙の神父と吸血鬼の少女が主人公なのだが、ツキシロという名のその少女は、神父でありふつ魔師であるギブの「聖なる下僕」なのである。まったくもって素晴らしい…いろいろ。
シリーズ第三作にあたるこの本は、ギブを取り巻く環境と彼の周囲の人間、舞台裏の秘密が少しずつ暴かれてきている。最初は冷ややかでろくに相手にもしていなかったギブと、純粋で一途でまだ子供子供しているツキシロの距離が相当に近付いたエピソードであるとも言える。大人になるということが天邪鬼で素直になれないということならば、どうしたって子供が勝つに決まっている。背伸びしてひとより早く大人になった男がどんなに遠ざけても、必ずそばにいると誓うこども。彼女はこどもだけど子供じゃない。どんなに見た目が愛らしくそうは見えなくても、心はたったひとりを愛する女性なのだということに、気が付きはじめた神父の動揺が楽しい。認めれば選ぶべき道はおのずとひとつだけが浮かび上がる筈なのだが、彼の無駄な足掻きとも言える葛藤がまたこのシリーズの魅力でもあるのだから浮かばれない。
ISBN:4044497044 文庫 橘 水樹 角川書店 2004/09/28 ¥500
シリーズ第三作にあたるこの本は、ギブを取り巻く環境と彼の周囲の人間、舞台裏の秘密が少しずつ暴かれてきている。最初は冷ややかでろくに相手にもしていなかったギブと、純粋で一途でまだ子供子供しているツキシロの距離が相当に近付いたエピソードであるとも言える。大人になるということが天邪鬼で素直になれないということならば、どうしたって子供が勝つに決まっている。背伸びしてひとより早く大人になった男がどんなに遠ざけても、必ずそばにいると誓うこども。彼女はこどもだけど子供じゃない。どんなに見た目が愛らしくそうは見えなくても、心はたったひとりを愛する女性なのだということに、気が付きはじめた神父の動揺が楽しい。認めれば選ぶべき道はおのずとひとつだけが浮かび上がる筈なのだが、彼の無駄な足掻きとも言える葛藤がまたこのシリーズの魅力でもあるのだから浮かばれない。
ISBN:4044497044 文庫 橘 水樹 角川書店 2004/09/28 ¥500
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