今日は珍しくコミックのレビューを。

大富豪であった祖父が亡くなり、莫大な資産を受け継いだたった12歳のミモザに、祖父が遺言でつけたボディガード…それがカイル。人間を信用していなかった祖父は、孫に「人間を信用するな」と言い残してロボットのカイルをボディガードにつけたわけなのだが、このミモザの純粋培養な気質と、まるでロボットと称された実際は警察の厄介者カイルとのハートフルなコメディーといったところか。

彼女の作品を読むのは久々だった。まだ学生だった頃に、「感嘆符なしでは語れない」という好きな話があって、それから夢の話(タイトルを忘れてしまった。不覚)に至るまでずっと読んでいたのだが、そこから暫く触れていない。本屋に並んでいるのを見て手に取ったのは、その設定の面白さだった。

本物のロボットのように無感情で良心の在り処もわからない青年カイルが、ミモザの純粋な愛情を通して、徐々に本当の人間になっていくのだ。冷たく冴え冴えとした瞳に怯えながらも孤独なミモザはロボットの優しさに頼ろうとする。自分を求めてくれる存在に、カイルは愛情というものを少しずつ理解してゆく。彼の悲しい過去が縛りつけていた感情を、ミモザが解凍していくのだ。

元々この作家さんの絵はとても可愛らしい。その愛らしさがともすればひどく暗くなりがちなストーリーを、柔らかく温かく照らしている。優しい、本当にやさしい物語だ。

「愛しい」「側にいたい」「守りたい」

「欲しいのはささいなものだ」

「オレは アルコールとチョコレートと ホンの少しの彼女の命令があれば生きていける――」

 思わずじーんとさせてくれる切ない台詞。これでオチたと言っても過言ではない。

ISBN:4592188063 コミック 森生 まさみ 白泉社 2004/09/04 ¥410

コメント

お気に入り日記の更新

日記内を検索