友人から借りた本。前々から薦められてはいたのだが、読む暇がなくて随分と読むのが遅くなってしまった。私と彼女の本の趣味は大体似通っているので、彼女が薦めてくれる本はほぼ私もハマッている。

読み終わって、梨木さんの作風にかなりの先入観を持っていたことに気付いた。もっとふんわりと柔らかく少女向きの話を書いているのかと思った。多分ペンネームが可愛らしいせいだろう。表紙もパステルで優しい。でも、内容は想像以上にシビアでミステリアスだった。

過去と現在が絶妙のバランスで混在するこの本は、読むひとを迷路に迷い込ませる。それは時の迷路であったり、謎と微かな恐怖の迷路だったりもする。そこから抜け出すのに必要なのはただ時間と、熱帯魚の行く末だ。この熱帯魚の存在が話の筋の上でとても重要な役割を担っている。

この世で最も残酷な優しい御伽噺だ。

読後、彼女の世界に引き込まれたままの私は、ぼんやりとそう思った。

ISBN:4101253358 文庫 梨木 香歩 新潮社 2004/02 ¥380

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