何はともあれ表紙のフェリックスが真剣な表情で好きなんだが(レビューになってない)。

何となくクリスティーを思わせるようなミステリー。勿論ずっとライトだが雰囲気がどことなく。このシリーズにしては凄惨なラストだったかなと思う。いつもは陽気で人を食ったようなところのある怪盗シュシナックがかなりシリアスで驚いた。彼の過去が出てきたが余計に謎が増えただけだった…。それもまたよし。

それからフェリックスの心の闇が覗ける1冊だ。なんというか子供にとっての母親の存在の大きさをしみじみと思う。最近、子供に対する悲惨な事件が増えているが、犯罪と明らかにされるまでにはいかなくても、一体どれほどの子供が自身の親によって傷付けられているのかと思うと胸が痛い。でも多分、フェリックスはこの先コラリーによって光を見ることが出来るのだろう。一生分の不幸を既に体験済みの彼にはこれから明るく優しい未来が待っているのだと信じてやまない。

どちらかといえば暗いストーリーに分類される今回の話だが、主要キャラの過去の傷を知ることの出来る貴重な1冊だと思う。このシリーズは底抜けに明るいように見えて、ふとそんな影を垣間見ることが出来る。だからこそ長く続いていても重荷にならないのだろう。

ISBN:4086147947 文庫 橘香 いくの 集英社 2000/12 ¥520

コメント

お気に入り日記の更新

日記内を検索