奈落の女神

2004年9月19日 読書
相も変わらずコラリーのことに関してだけ理性をなくすフェリックスがいる。この話では、怪盗シュシナックのバックグラウンドや本名などがわかるので、彼のファンのひとにはお勧めだと思う。彼の素顔は結構な人数が知っている模様…あまり隠す気がなさそうだ。変装の名人だけに顔を知られたところでと思っているのかも。

ミステリー度としては幾分低めなこの本。トリックなどで楽しむよりはコラリーとフェリックス、そしてシュシナックのそれぞれのキャラを楽しんだ方がいい。それにしてもフェリックス氏は誰であろうとコラリーに近付く者は容赦しないのですな…ステキ過ぎる。

彼が軍人として戦争に赴いたときのエピソードもあるのだが、あまりに彼らしくて笑ってしまう。常識というものがとことん通じない存在だが、彼が出てこないと淋しくて仕方がなくなるのは、すごい存在感だと思う。少しずつフェリックスへの恋心を確認してゆくコラリーの心の動きもポイントだ。

薔薇が帰ってくるとは思わなかった。フェリックス、彼の言動は一体どこまでが計算でどこからが天然なのか…。謎めいた男である。最後に珍しくシュシナックに喝采の仕返しをしたあたり、フェリックスの抱える鬱屈としたものがわかって仄かに可笑しい。

ISBN:4086146452 文庫 橘香 いくの 集英社 1999/10 ¥540

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